古い蛇腹カメラの情報です。
プリマー(Primar, Flach-Primar)は,ドイツのクルト・ベンツィン社(Curt Bentzin, Goerlitz)で,1910年から1937年まで製造された折り畳み式プレートカメラ。プレートと言っても,現在乾板は入手できないので,ハンドカメラあるいはフィルムバック交換式折り畳みカメラと呼ぶ方が正確かもしれない。しかし,ここでは慣例に従い,畳むとコンパクトになる簡易型のテクニカルフィールドカメラを折り畳み式プレートカメラ(folding plate camera)と呼ぶことにする。
クルト・ベンツィン氏は,1891年にドイツ東部のゲルリッツにベンツィン社を設立し,独自のアイディアを取り入れた革新的なカメラ(Reflex-Primar, Primarette, Primarflex...)を製造した。これらの革新的カメラとは対照的に,プリマーは伝統的な構造をもつ折り畳み式プレートカメラで,ドイツ語のprimar(第一の,最初の)の名前が付けられた。あるいは,prima(素晴しい)の意味も込めたかもしれない。
プリマーのサイズは,6.5x9,9x12,10x15cmの3種類。この内,6.5x9(大名刺判)はアルミ合金の本体に黒革張り,9x12と10x15は木製の本体に黒革張りの外装で作られた。
レンズは,主にCarl ZeissのTessar(3群4枚)が搭載されたが,同社のDoppel-Amatar (2群6枚)やMeyer OptikのTorioplan(3群3枚)も提供されたという記録がある。しかし,私はTessar以外をまだ確認できていない(現在確認中)。
使用時は,本体の左上のボタンを押して前蓋を引き出し,前蓋上のレールにレンズスタンダードを繰り出して無限遠の位置に固定する。ピントはピントグラスか,レール横の距離目盛に目測で合わせる。ファインダーは反射式の小型ブライトファインダーと,折り畳み式のフレームファインダーが利用できる。ブライトファインダーは水準器付で,横位置での撮影時は,ファインダーを90度傾けて使用できる。蛇腹は長く,一杯に伸ばせば等倍のマクロ撮影が可能。現在はプレート(乾板)が入手できないので,120ロールフィルムやカットフィルム用のホルダーをバックに取り付けて使用するが,専用のホルダーが無い場合,取り付けと調整に工夫が必要になる。
以下では,私自身が使っている6.5x9cmのプリマーについて説明します。
写真:Curt Bentzin, Primar とロールフィルムホルダー。
外見上の特徴は,本体の縁の部分(幅3mm程)が黒革で覆われず,下地のアルミ合金が露出していること。縁の部分が金属なのでシャープな外観になり,耐久性にも優れる。この手法はプリマーフレックス等にも使われ,後のリンホフテヒニカIIIやハッセルブラッド1600Fにも影響を与えた(?)と思われる。
レンズとシャッターのシリアル番号から推定すると1930〜33年頃の製造なので,プリマーとしては後期の製品と思われる。ロールフィルムホルダーは専用の付属品で,Patent Rollex等の他社のフィルムホルダーとの互換性は確認できていない。(少しサイズが異なるように思う。)このホルダーは,フィルムの巻き取りが普通と逆方向で,巻き取ると外側にフィルム面(黒面)が出る。理由は不明だが,昔はこの方式が主流だったようだ。逆巻き防止のスプリングを外せば普通の方向にも巻ける。赤窓は2つ(6x9,6x4.5)あり,6x4.5cmの遮光フレームを作れば「セミ版」カメラとして使うこともできる。
大きさは畳むと 81x35x115mm,重さは約681g (本体 + ピントグラス)。ロールフィルムホルダー(185g)に交換すると766g,ピントグラスを加えた合計で866g。かなり軽量コンパクトな6x9カメラである。
軽量コンパクトでありながら,ムーブメント(アオリ)の機能も備えている。移動量は小さいが,フロントのライズ(10mm),フォール(5mm),左右のシフト(±10mm)が可能。後のロールフィルム専用の6x9スプリングカメラが大型化し,アオリが省略された事を考えると,昔のプレートカメラの方がコンパクトで機能的だったと言えるかもしれない。(だだし,一部のシフト中判カメラを除く。)
同種の折り畳み式プレート(ハンド)カメラとして,日浦様が紹介されているフォクトレンダーのアヴスやベルクハイル,ツァイス・イコン(イカ)のマキシマーやイデアール等がある。プリマーはこれらの中でも比較的小型軽量と思われる。(日浦様のアヴスの紹介記事に興味を刺激され,同種のカメラをロールフィルムバックで使ってみたかったというのが,プリマー購入の理由の1つです。)


写真のプリマーはシャッターはコンパー、レンズもテッサーの10.5cm F4.5 という、まさに「間違いのない」組み合わせかと思います。このレンズは本当に良い仕事をします。蛇腹の状態も良さそうですね。
ご指摘のようにロールフィルムバックは逆巻になりますね。うちのも逆回転防止がうまく働かないのを良いことに普通の順巻で(矢印に逆らって)使っています。難点があるとすれば、フィルムの経路の余裕が少ないので、しばらくはフィルム面へのスクラッチに悩まされました。このスクラッチの問題と、ご指摘の取付部の互換性(ガタツキ、光漏れ含む)、平面性の問題がおそらくこの手のカメラの難点で、それが問題なければ今日でも十分に使えるものと思います。


> ご指摘のようにロールフィルムバックは逆巻になりますね。うちのも逆回転防止がうまく働かないのを良いことに普通の順巻で(矢印に逆らって)使っています。
おお,そうですか,驚きました。昔のロールフィルムバックはPatent Rollexを含めて逆巻なのですね。逆巻きだとフィルム側に(裏紙より)巻く時に張力がかかるので平面性が少し良くなるのかな? 私は取りあえず逆巻き(矢印向)で撮りながら,フィルムの仕上り(1本目を現像中)を見て,光漏れやスクラッチが無いかを確認しながら調整する予定です。
> 写真のプリマーはシャッターはコンパー、レンズもテッサーの10.5cm F4.5 という、まさに「間違いのない」組み合わせかと思います。このレンズは本当に良い仕事をします。蛇腹の状態も良さそうですね。
有り難うございます。蛇腹も本体も良い状態ですが,絞り羽根に不具合があり,修理の専門家に直していただき,今は快調です。戦前のCarl Zeiss Jena純正のレンズはこれが初めてなので,楽しみです。
実は,このテッサーは将来的にHeliar 105mmと取り替える予定です。Heliarは古い壊れたハンドカメラから取り外したレンズで,これまでテヒニカ23のボードに付けて使っていたのですが,やはり小型のカメラで軽快に使いたい。そこで(これも日浦様の記事からヒントを得て)プリマーに取り付けて使おうという計画です。ところが,プリマーはボードの孔が小さく(30mm),Heliarのシャッター(32mm)がそのままでは入らない。同じコンパーシャッター(00〜0番?)でも年代によって規格やサイズがバラバラで,なかなか計画通りにいかないなあ。


デジタルバックを装着するには,フィルムバックが交換できるプレート式が有利で,受光素子がピント面から多少ズレても蛇腹式ならレンズの位置を変えて対応できる。デジタルバックのプレビュー機能を使えば,複雑なファインダーや距離計も不要になる。ロールフィルムを前提に作られた近代的なカメラ(1~2眼レフレックス,レンジファインダー式)より,原始的なビューカメラの方がデジタルに適している。ビューカメラの携帯型である折り畳み式プレートカメラやテクニカルフィールドカメラに,デジタルの可能性を感じる。
デジタル技術の進歩が,カメラをシンプルな「暗箱」に回帰させ,古いプレートカメラを復活させるのではないか? 最近のハッセルブラッドの提案(907X等)はそれを暗示しているように思われる。


書類のスキャナというとPCが必要に思えますが、単体で取り込めるものがあり、
https://www.instructables.com/id/DIY-4X5-Camera-Scan-Back/
にあるように小ぶりで、かつ取り込み面が外から見えるものがあります。ある意味理想的なのですが、上記のようにランプの問題と、入射角の問題が課題で、ここがうまく解決できれば良さそうには思えます。
ところで僕の方は、クラップカメラですが、先日「コートポケットテナックス」を入手しました。なぜかというと焦点距離の短いダゴールレンズ(100mm)を試してみたかったからです。ただしコートポケットテナックスは撮り枠部分が少し大きめで、手持ちのロールフィルムバックが付きませんでした。アダプターを作り手持ちの0番シャッターに組み換え、今日、ホースマンで撮影してきたのでそのうちレポートします。


> 書類を取り込むスキャナを取り付ける方法があり、国内外でトライしている人のHPがよく見つかります。
> もう1つは、レンズからの光がちゃんと取り込まれる角度が限られているので、スキャナの取り込み面に拡散板やフレネルレンズを入れる必要がある点が指摘されています。
いろいろ面白い事を考える人がおられるのですね。
大分昔(10年以上前?),Better Lightというスキャン型デジタルバックを作る会社がアメリカにあり,日本でも輸入代理店(テイクだったかな?)があったと思います。しかし,ネットで調べると創業者が3年程前に亡くなり,今は在庫を切らして休業中の様です。市販の書類用スキャナーの構造を良く知らないのですが,ガラス面(原稿)と内部のセンサーの間に集光レンズがあると思います。この集光レンズを取り外さない限り,カメラレンズからの光を直接センサーへ合焦させることはできないと思われます。集光レンズを温存する場合,ご指摘のようにガラス面に拡散板(磨りガラス)が必要ですね。フレネルレンズで集光できるのは私には??です。
> 先日「コートポケットテナックス」を入手しました。なぜかというと焦点距離の短いダゴールレンズ(100mm)を試してみたかったからです。ただしコートポケットテナックスは撮り枠部分が少し大きめで、手持ちのロールフィルムバックが付きませんでした。アダプターを作り手持ちの0番シャッターに組み換え、今日、ホースマンで撮影してきたのでそのうちレポートします。
おお,ダゴールですか。憧れのレンズです。私もDagorをいつか使ってみたいと思い,彼方此方のサイトを探しています。できれば諧調が広くなだらかな戦前のノンコート,カールツァイスイエナかベルリン製が欲しいですが,状態の良いものはまだかなり高価です。100mmなら6x9にピッタリで使い易そうですね。ダゴールの際立った立体感とシャープで抜けの良い描写が楽しみです。


それに対し最近のローコストなスキャナはCIS (Contact Image Sensor) などと言われる構造になっています.Contact といっても間にガラス板があり,センサが書類に直接接触するわけではないのですが・・文書と同じ大きさ(長さ)のライン型画像センサがあり,これと文書との間に細かなレンズを多数並べ,文書の像を画像センサに投影します.細かなレンズは普通のレンズとは異なり,成立正像の結像ができる特殊な光ファイバー型のレンズ(GRINレンズ)になっているため,多数のレンズを並べてもきちんと像ができるという仕組みです.詳細な構造は
https://www.prolinx.co.jp/contents/cis-camera/290/
などを御覧ください.
この構造の場合,(結像レンズを使う場合と異なり)常に書類からの反射光のうち,書類面に対し垂直方向に反射した光が結像に使われます.また,レンズアレイに沿った方向の斜めの光もGRINレンズの画角内にある限りセンサに届きます.しかし,レンズアレイのラインから離れる方向にずれた点からの光はセンサに届きませんので,センサの各画素が受け取る光(集光角とでもいいましょうか)はセンサ長手方向に伸びた形になり,画像の端(スキャナの開始直後の位置や終了あたりの位置)では光が入らないことになります.
実際にはこのレンズアレイ(SELFOCレンズアレイ)を撤去してしまうのが一番ではあるのですが,スキャナの構造的にセンサが奥まった位置にあり,なかなかそれも難しいようです.
ところで,週末にデータを整理し,ダゴールとテナックスの記事をアップしました.よければ,また,御覧ください.
http://shiura.com/camera/dagor/index.html


> 詳細な構造は... などを御覧ください.
> 実際にはこのレンズアレイ(SELFOCレンズアレイ)を撤去してしまうのが一番ではあるのですが,スキャナの構造的にセンサが奥まった位置にあり,なかなかそれも難しいようです.
このCISは全く知りませんでした。確かにこの場合,レンズの中心から離れる方向に広がる収束光を,凸レンズ(フレネルレンズ)を入れることで,センサのレンズアレイの方向に近づけることができそうです。でも理想的ではないですね。レンズアレイのない「ベタ焼き」のようなスキャナーがあればいいのですが...
> 週末にデータを整理し,ダゴールとテナックスの記事をアップしました.
素晴しい記事を有り難うございます。
ダゴールは中判〜大判で風景写真を撮る者には伝説的な響きをもつ魅惑的なレンズです。日浦様の試写画像を拝見すると,絞った時の中央部の解像度の高さが圧倒的ですが,開放時の背景のボケの美しさにも目を奪われました。ダゴールは後ろボケがチリチリで汚いという人がいますが,どうやら事実では無いですね。恐らくレンズの球面収差が関係していると思われ,とても興味深く思います。


近距離撮影用単独距離計セット
レンジファインダーカメラが主流の時代、カメラ単体では最短撮影距離は1m、せいぜい70pまでに限られており、手軽に近距離撮影を行うことはできなかった。
本格的には焦点版とカメラをスライドさせて入れ替える装置や、レフボックスが使われたが、頑丈なスタンドに固定する必要があり、旅先やお茶の間のスナップに使うわけにはいかない。
そこで、レンジファインダーカメラで手軽に近距離撮影するために、別スレッドにある「オートアップ」類か、それに準じた、カメラ本体の距離計を利用するデバイス、またはワイヤーやプレートによる距離固定された撮影枠を用いるもの、そして、これから述べる、近接専用の単独距離計をクリップオンするものなど、様々なアイディア製品があった。
一眼レフ、さらにはミラーレスデジタルカメラの時代には全く無用の代物だが、先人の創意工夫が偲ばれて使って楽しいアクセサリーだ。
オートアップは間宮誠一郎のアイディアでプレザント社が多機種に対応する製品を展開したが、同様の製品「プロキシメーター」はフォクトレンダー、アグファが純正品を出し、またツァイスは「コンタテスト」を供給、ニコン、キヤノンRFも純正で出ている。
ライツはオートアップ同様に本体ファインダーを利用し距離計前におく偏角プリズムを中間リングと組み合わせた「NOOKY, SOOKY, ADVOO」などに加え、中間リングとセットの固定ロッドに撮影枠を付けた製品を供給した。
他方、ツァイスイコンと、ドイツコダックは、プロクサーレンズに近接専用の単独距離計を組み合わせた製品を出しており、各社各様の方式が興味深い。
時は離れて80-90年代、中判の距離計連動カメラが復活し、一部の機種は近接撮影装置をラインアップさせた。
フジカGS645初代は、クローズアップレンズに、焦点版を持つ上下左右逆像の近接ファインダーを組み合わせた、たぶん空前絶後のセットを出した。もちろん実用性は高くない。
ニューマミヤ6はオートアップのリバイバル、マミヤ7は打って変わって固定ロッドの先に撮影枠をつけた、かつてのライツやニコノスと同じ方式を採用したが、それが接写装置の最後になった。おそらく新たに登場することはないだろう。
写真は、戦後ツァイスイコン コンタックスIIa、IIIa用 コンタメーター439 Sonnar 50mm,Proxer 50cm
戦後型のツァイスイコン製近接距離計。439はコンタックスIIa、IIIa用。
外観はオールクローム、採光式ブライトフレームを備えている。ダイヤル切り替えによってパララックス補正と距離合致を行う点はレチナと同様。3種類の距離に対応したプロクサーレンズを併用する。標準セットではφ40.5mmスレッドだが、ステレオター専用はスレッドが省略された円筒になっている。
プロクサー(クローズアップレンズ)ではなく、コンタプロクスというヘリコイドで接写するシステムにも対応している。
コンタプロクス1および戦前コンタプロクスはコンタメーター439に対応していないのでここでは触れない。
コンタプロクス2は、Tessar50mmf3.5が固定装着してある、外バヨネット三脚座つきヘリコイドで、かなり長大なストロークを持っていて、その目盛りの途中にコンタメーターの設定距離、50,30,20pが含まれている。本体の距離計には連動しないが、距離目測で無限遠から使える。コンタプロクス2のTessarは東独Jena、西独TつきOpton、TなしCarlZeissがある。手元のTなしは無限遠から性能はよいが、近接設計とは言えないように感じる。(テッサーは近接でもあまり性能が落ちないとどこかで読んだ気がするが、どうなのだろう)
プロクサーによる変倍ではコンタメーターのブライトフレームの中で一番外側を使う。変倍しても視野枠は変わらない。一方コンタプロクス2は繰り出しによって画角が狭まるため順に内側の小さな視野枠を使う。50pはプロクサーと同じ外、30pはその1つ内側、20pは一番中心の枠で実質倍率が高くなる。
コンタプロクス2とコンタメーターの組み合わせは当時としては出色の使いやすさだったろう。ただし同時代にコンタックスSやエクサクタが存在しているので、本格的な接写には劣ると思われるだろう。しかし当時のSLRは普通絞りかプリセットで不便、またスクリーンは暗く焦点は曖昧だ。コンタメーターは絞りに関わらず明快な視野と正確な距離計により快適であり、十分当時のSLRを超える利点があったと思う。


439とほぼ同じ構造だがTessar45mm用に適合している。
プロクサー50,30,20は、439の40.5mmから28.5mm径になった。
本体側は無限遠に固定して使う。
精度は非常に良い。


これはフランス製のMAJOR −2−という距離計、無限から0.2mまで連続的に測距できます。
基線長が短く、近距離重視であることが予想されます。
距離目測カメラのキヤノンデミEE17には、36cmに寄れるクローズアップレンズが用意されています。
この距離計は大変コンパクトなので、ハーフサイズカメラにも違和感なく搭載できます。
この組み合わせの問題は、視野決定が困難であること。
ここまで寄るとパララックスが大きく、正確なフレーミングは諦めて、おおまかに勘で合わせるしかありません。
距離が合うだけでも使い道があると思います。


これより古いオールクロームの製品もある。NI/32, NII/32というφ29.5mmクローズアップレンズ2種類と、I, IIを重ねたときの3つの状態に対応した上面ダイヤル表示に従って、本体距離目盛を設定する。または先に本体側の距離設定を行って、近接距離計のダイヤルを合わせてもよい。ダイヤル回転に応じてアクセサリーフットの俯角が変化し、パララックスが補正される。後は距離計が合致したところで撮影する。
Retina IIIc、Xenon 50mmf2, NII


ただし、距離計ダイヤルは軽く動きやすく、知らないうちに設定が変わっても気付かずに撮影続行する危険性があり常に注意せねばならない。また、距離計ファインダーで設定する視野決定はどうしても正確ではなく、大まかに撮影してトリミングで整えることになりがちで、コンタメーターのような距離固定が決定的に劣っているとは言い切れない。
以下撮影距離は、メジャーによる大まかな測定。またm表示モデルなのでftモデルでは多少異なるかもしれない。
I:ダイヤル∞ー1(m)、フィルム面から92-54cm
II:ダイヤル∞ー1.5(m)、フィルム面から50-37cm
I+II: ダイヤル∞ー0.9(m)、フィルム面から36-28cm
これを見ると、だいたいNIは一般的なNo1(1m)、NIIはNo2(0.5m)、NI+NIIはNo3(0.33m)に相当しているが、厳密にはズレがあるようだ。


IIIC用Culter-Xenon C35/5.6、IIIS用Tele-Arton85/4もフィルタースレッド29.5mmなので装着は可能。合焦するかどうかは皆様自己責任で...
これを言っては身もふたもないが、このプロクサーNI, NIIはRetina Reflexで使うほうが、よっぽど正確で使いやすい。
レチナレフには専用クローズアップレンズR1, RII, RIIIが供給されているがI, IIについてはNと同じ物ではないか?
(先のコンタメーターの所で触れたSLRとの比較と意見が反対ですが、それは先に比較したContax S, Exakta Valexら原始的SLRと較べ、Retina Reflexは自動絞りが先進的であり、ここまでくると接写におけるSLRの有利が明らかになってくると思います)
Retina IIIS, Retina-Xenar 50mmf2.8, NI


有名所としてはミノックスチェーンがありますね。同じように携帯用チェーンを利用するヤシカアトロンもあります。
これはツァイスイコンの大衆用ライン、コンティナなどに対応した近接ファインダーとチェーンのセット。
チェーン先端には黒いプラスチック小球(50cm)、途中に赤い小球(30cm)があり、ファインダー基部の黒赤切替で俯角を設定します。。
対応したクローズアップレンズは、コンタフレックスと共通のφ28.5mmカブセを使います。
私のは赤玉が外れちゃってます。多分レンズからアクセサリーシューまでの距離が同程度のカメラなら汎用に使えるのではないかと思います。
Contina IIa、Pantar45/2.8, Close up chain


120,220フィルムとは
コダックコード#120フィルムは61.5mm幅、裏紙付き6x9p(56x84mm、機種によって差がある)8枚撮り規格として1901年に登場し、世界のデファクトスタンダードとなった。コダックはほかに多種多様な規格の裏紙つき無孔ロールフィルムを販売したが、120だけが100年を超えて生き残った。1972年コダックは120と同じ幅で2倍の長さの220を発売、フジフィルムやコニカも一部追随した。裏紙がないため赤窓式では使えないが、平面性が良好で撮影可能枚数が2倍になるため、近代的中判カメラのほとんどが対応した。
220を使うためにはフィルムカウンターと、裏紙有無の厚みの差を解決せねばならない。
220は裏紙の厚み分120よりフィルム面が後退する。その分だけ圧板の厚みを増す必要がある。
付記するがブローニーカメラの焦点面は、フィルムゲートのフランジ面で規定されず複雑に凹凸している。
例えば旧来のアパーチャーゲートと圧板でフィルムを挟む「圧着式」ではフィルム中央部は前方に突出し、その度合いは裏紙の材質、湿度、巻き上げから撮影までの時間、そしてフォールディングカメラでは蛇腹伸張に伴う「吸い出し」によって変動するため、特に焦点深度が浅い大口径レンズでは深刻な問題になる。
近代的カメラでは圧板とフィルムゲートの間にクリアランスを設け、フィルムは隙間を通行する「トンネル式」が採用され劇的にフォルム面浮動は改善した。
トンネル式では圧版位置がフィルム面を規定するため、兼用機では220使用時に圧板位置を変更する機種が多い。


結論を言うと、装備するレンズの開放f値(使用f値でもよい)と、どの程度のプリント拡大率を見込むかで答えが変わる。f4、厳しく見積もってf5.6より絞るなら圧板位置を切り替える必要は少ない。
またサービスサイズからキャビネ程度の拡大率では肉眼で差を認識できない。
ただし中判ユーザーで大伸ばしを考慮しない人は少数派だろうし、機材側もf2.8以上の口径が珍しくないため、圧板切り替えはあったほうがよい。F2.8で圧板切り替えを忘れると「明らかに」焦点外れを認識できる。
例えばハッセルブラッドM12マガジンは、元来120専用で圧板は変更されない。一応220フィルムを使用するキットが販売されたが、f2.8開放で無限遠が5-10m程度の前ピンになる。そこで圧板に120裏紙を取り付けると無限遠に合う。同様にSL66マガジンも120裏紙の効果を確認した。


固定圧板機には、220を考慮しないで製作されたが後で使用できるようになったものと、220を前提に設計されたものがある。
前者はハッセルM12で、明らかに焦点面がずれる。
後者は120と220の中間に圧板が調整され、どちらも焦点深度の誤差内に入るようにしているらしい。
さらに、前述したように、120/220焦点面はf4-5.6に絞れば深度に入ってしまうので、実用的には圧板固定機でも問題になることは少ないと思う。
それでも製作誤差はあり得るし、購入後テスト撮影で開放の焦点精度を確認すべきだ。
私のSL66は120に合致し、220では外れたためそれを考慮して使用している。
f2クラスの超大口径の開放は、誤差では済まされないため、テストはさらに厳密を要するだろう。


極めて残念なことに、220フィルムは2016年に生産終了し、今後は業者と個人ストックだけが存在する。
積極的220ユーザーであっただけに寂しいが、入手容易とは言えないため新ユーザーにとってこのレポートは実用的でない。
例外的にローライキンのユーザーは裏紙なし135フィルムを使うため圧板を135・220位置に切り替える必要があり、このレポートが役立つ?かもしれない。
と思ったら、eBayに中華製220モノクロフィルムが出品されているらしい。どこまで継続性があるか、実用性はどうか全く不明だが、一応現実に選択肢はあるわけだ。
220機材は、220ディスコンに伴って評価額が極めて低く、かつての高額高級付属品が投げ売り状態である。専用マガジンがタダにはならないのが腐ってもタイだが、一時高値を付けたローライ12/24切り替え機も120専用機と価格は変わらなくなった。220は性能的なメリットもあるので楽しんでみるのも一興かと思う。
220現像には、パターソンリールはそのまま対応、ナイコールタイプは専用リール(120より巻きがつまった)が必要。カウンターが対応する専用機材は必要だが、ハッセルM12のように無理をすれば、120専用機でもなんとかなる、かも。
次から各論に入る。


それをまとめて分類してみる。
圧板(Pressure plate)の形式
PF:圧板固定(Fixed)120/220で圧板切替しないもの
PS:圧板スライド(Slide)圧板を平行移動するもの
PI:圧板裏表差し替え(Inside out)圧板を一旦外して裏表交換するもの
PR:圧板回転(Rotate)圧板を外さずに回転させるもの(一部外して縦横変換するものがある)
PA:圧板自動(Automatic)カウンター切替またはバーコード読み取りにより自動的に圧板位置が変換されるもの
カウンター(Film counter)の形式
Cm:カウンター手動(manual)カウンターを手動で切り替えるもの
Cd:カウンター連動(demand)圧板変更に伴いカウンターが切り替わるもの。
Ca:カウンター自動(automatic)バーコードによる完全自動切り替え
Cr:カウンターリセット(reset)120用カウンターをリセットしてもう一度使うもの
画像:ペンタックス67 スライド式切り替え:PS


GX645AF, Hasselblad H:PA-Ca(Bar-code)PA-Cm(バーコードなし)
Bronica RF645:PS-Cd
Fuji GS645:PS-Cm
Fuji GA645:PS-Cd
Fuji GA645i:PS-Ca(Bar-code、圧版と異なる場合警告)PS-Cd(バーコードなし)
Fuji GA645Zi:PA-Ca(Bar-code)PA-Cm(バーコードなし)
一眼レフ
120/220兼用、切替可能なのはフジフィルムGX645AFと兄弟機のハッセルブラッドHシリーズのみ(バーコードまたはスイッチによる自動切り替え)で、このとき圧版位置も自動変更されるが触ったことがないので詳細不明。
他の645機(ブロニカETS、マミヤM645、コンタックス645、ペンタックス645)はすべて120,220別の専用マガジン、あるいは専用着脱式中枠(フィルムホルダー)を交換する。
キエフ645は現物を見たことはあるが内部は不明。
ブロニカS2、EC用645マガジンは120専用のみ。
マミヤRB67用645マガジンも、120のみ。RB67プロSD用は120と220は別。
フジGX680用645マガジン:120と220は別
RF
ブロニカRF645は背部に120/220表示窓があり、カウンター切替装置がない。圧版切替に連動しカウンターが切り替わる。
フジフィルムGS645系は圧版をプッシュしてスライドし、120/220表示位置に嵌め込む。カウンターは背部に切替スライドを別個に操作する。
フジフィルムGA系は圧版位置をGS系同様の圧版スライド変更すると、圧版位置を検知し自動的にカウンターが切り替わる。
GA645i、GA645Wi(i系)はバーコード入りフィルムはフィルム感度自動セットに加えて120/220カウンターが自動的に切り替わる。圧版は手動スライド切替。バーコードと圧版が相違した場合液晶120/220表示が点滅して警告するとともに、フィルムカウンターはバーコード情報が優先される。(日浦様のご指摘)
GA645Ziは、バーコード情報を読み取りボディ側から圧板位置が自動的に調整され、完全自動になった。バーコードがないフィルムは、裏蓋の圧板横スイッチを押して120/220表示を切り替える。圧板位置とカウンターは自動調整。
画像:GS645:PS


66一眼レフ
Bronica S2, C2:PF-Cm
Bronica EC, ECTL, ECTL2:PF-Cm
Rolleiflex SL66、SL66E:PF-Cm
Rolleiflex SLX:PF-Cm
Kowa SIX, MM, Super66:PI-Cm
Pentacon Six, Exakta66、Kiev6C:PI-Cm
Ritreck 66, Norita66:PI-Cm
Hasselbrad M12 mag:PF-Cr
ブロニカS2, C2、中枠は圧板位置の調整はなく、スタートマークも120/220の区別はない。マガジンのカウンターを12/24切替する。
同EC, ECTL, ECTL2共用中枠、圧版位置調整なし、カウンター切替のみ。
ローライフレックスSL66(初代)ブロニカS2, ECと同様、圧板位置調整なし、マガジンのカウンター切替のみ。SL66Eも同様。その後SL66SE, Xは120、220専用マガジンになった。
ローライフレックスSLX フィルムバック背面のカウンター切替のみ。圧板位置調整なし。6006以後は120、220専用マガジン、6002は120、220専用バックになった。
コーワシックス、シックスMM、コーワスーパー66:圧板裏表差し替え、カウンター切替。
ペンタコンシックス、エクサクタ66:圧版差し替えで切替。プラクティシックス時代は120専用。
キエフ6C:初期は圧板切替なし、カウンター手動切替のみ。後期はペンタコンシックス同様圧板差し替え。
60:120/220対応とされる記述もありますが、120専用との記載もあります。
リトレック66、ノリタ66:圧板裏表差し替え、カウンターダイヤル手動切替。
ハッセルブラッドM12マガジン:圧版位置調整なし。後窓を見ながら巻き上げ、フィルム頭が出たら後部確認窓をLight tight plugで遮光し、少し巻き上げてカウンター1を出す。12枚撮影後カウンターリセットしてもう12枚撮る。13-24まではコマ間隔が広がっていくがなんとか最後まで収まる。
画像:コーワシックスMM:PI 取り外して裏表差し替える。Super66の交換マガジンでも同じ操作。


Yashica Mat 124, 124G:PS-Cd
Minolta Autocord III, CdS:PR-Cm
Rolleiflex 2.8E, F, 3.5F:PS-Cr
Mamiya C220:PR-Cm
Mamiya C330:PR-Cd
ヤシカマット124、124G:圧版スライド切替に連動してクランク横の12/24枚数インジケータが切り替わり、カウンターも連動する。
ミノルタオートコードIII, CdS:圧版とりはずし90度回転装着、カウンター手動切替。
ローライフレックス2.8D, E, F:12/24モデルは兼用機。またキットで兼用機にグレードアップできた。圧版スライド切替。カウンターは最初ノブを24にセットし1-12まで撮影後、12に切り替えると1にリセットされさらに12まで撮影する。
マミヤC220, C330:圧版回転切替。C220はカウンター手動切替、C330は圧版を切り替えるとカウンターが連動する。
画像:ローライフレックス2.8E、スライド式 PS 左にずらすと6x6表示がでる。つまりこの時点では220は未発売で、ローライキンと120の切替であり、220キットを後付けしたと考えられる。


Pentax 6x7, 67:PS-Cm
Pentax 67II:PS-Cd
Mamiya RB67 6x8電動バック:PR-Cm
Fujica GM67, GW, GSW67、680:PI-Cm
Fujifilm GF670, 670W:PS-Cd
Makina670:PI-Cm
Mamiya 7:PR-Cd
Mamiya Press Rollholder2型、3型:PI-Cm
Linhof 220:PS-Cm(PS-Cd?)
一眼レフ
ペンタックス6x7、67、67II:圧版スライド切替。6x7と67はカウンター手動切替、67IIは圧版に連動してカウンター切替。
マミヤRB67系:6x8電動ホルダーのみが圧版回転切替。カウンター手動切替。
二眼カメラでは切替式はなし。
RF
フジカGW, GSW670, 680:圧版裏表切替、カウンター手動切替。(120半裁:6枚撮りの設定もある。ライトパンSS対応)
フジGF670,670W:圧版スライド式,カウンター連動。
プラウベルマキナ670:圧版裏表差し替え、カウンター手動切替。マキナシリーズでは670のみ220使用可能。
マミヤ7:圧版180度回転切替。カウンター連動。
マミヤプレスロールホルダー2型、3型:圧版裏表差し替え、カウンター手動切替。
リンホフ220:圧版スライド式、カウンター手動切替?
画像:マミヤ7:圧板回転式:PR


Fujica G69, GW, GSW69:PI-Cm
Mamiya Press Rollholder2型、3型、Plaubel Pro-shift:PI-Cm
Wista Roll holder:PF-Cm
フジカG69、GW, GSW690 圧版裏表差し替え式、カウンター手動切替。(120半裁:6枚撮りの設定もある。ライトパンSS対応)
マミヤプレスロールホルダー2型、3型:圧版裏表差し替え、カウンター手動切替。
プラウベルプロシフトは3型と同形式。
ウイスタロールフィルムホルダー:圧版切替なし。カウンター手動切替。
612
リンホフテクノロレックス:圧版切替なし(だったと思う)、カウンター手動切替。
フジG617:触ったことがありません。120/220切替式、だが方式はわかりません。たぶんGW690と同じPI-Cmでしょう。(アートパノラマは赤窓なので220無理)
ワイドラックス120:触ったことがありません。ご教授お願いします。
画像:フジGS690:裏表差し替え PI


mamiya 645AF,AFD,AFDII 中枠の圧板の180度回転による切り替え
mamiya 645AFDIII 中枠の圧板の180度回転による切り替え
(IIIでフィルムホルダーの変更がありました)
以前にmamiya 645pro でフィルムを使っていた際ですが、150mm程度の望遠で雨や雪等の湿度が高い場合は 絞りF5.6でも 120を使うと画面のどこかにピンぼけがあらわれることが頻発するので(中央とは限りませんし複数箇所の場合もあり)、自分の場合はピンぼけを軽減させる目的で、必ず220フィルムを増感して使っていました。M645よりPentax645のほうが平面が出ていましたが、一説には圧板手前のフィルムの折り曲げ具合の違いが原因で、M645はS字、Pentax645はC字のためと言われていましたが正しいかはわかりません。
220のポジが入手できなくなったので、デジタルバックに移行するしかありませんでした。
ご指摘を深く感謝します。
120裏紙によるフィルム面浮動の影響についても、ご経験をたいへんありがとうございます。
f5.6でも外れるほどの浮動があるわけですから深刻です。
私は220をかなりストックしていますが、いずれ終了するのも確かで、非常に参考になるお話でした。
確かにデジタルバックは平面性について懸念は払拭されますね。
逆にホコリ付着は素人ながら懸念するところです。どっちがいいかと言えば,修正でなんとかなる可能性が高いホコリのほうが与しやすいかもしれません。


220フィルムが無くなり、何のためのカウンターか判らない人が増えてきています。
ムック等では紹介されていても、実際に220フィルムを使用された経験がない方が大半だと思います。
一時は220が使える事がフラッグシップ機の証の様でしたが、フィルムがなくなってしまい、その辺りが微妙になってしまいました。


最初に述べたように大手が220撤退したため、新たに中判を始められた方にとっては有益な情報ではないのを承知でまとめました。
Studio9600さまのご経験をみても220は平面性で高いメリットがあったため、大変残念なことです。
さてカメラ・レンズ白書74年版を書庫から掘り出して眺めていると、各種中判のフィルム面精度が載っていて、120・220圧版切替なしのブロニカS2は、どちら焦点面はほぼ一致し、大変揃って被写界深度内に収まる焦点面でびっくりします。
他の圧版切替機が結構ばらつき、被写界深度から外しているのを尻目に、どういうことなのか理解に苦しむ結果です。
私はブロニカS2で220を通したことがあまりありませんので、SL66やハッセル1600Fで行った120と220の検証をやっていないのです。
今更貴重な220を、高価な現像料金を払って検証するのもどうかなあ、とネガティブな気持ちです。
まあ、この辺は謎と言うことで....(^^;;;


コダックトライXプロとプラスXプロのみに設定があります。パナトミックやローヤルXには220がありません。
当時のフジと小西六のラインにはカラー含め存在せず、コダックもネガカラーはベリカラーのみ、ポジの設定はありません。
その後他社がモノクロで追随したかはわかりません。
カラーは鮮明に覚えているのですが、1985から最近まではモノクロから遠ざかっていた時期で、中判にモノクロを通したのは2017年が初めてだったりします。
余談ですが80年代初めはまだ116,616と620,127は現役だったのですね。


Rollei Standard
Rolleiclubによると、名称はStandard Rolleiflex 6x6 K2
前モデル(Original Rolleiflex: 117フィルム専用6枚撮り)と入れ替わりに1932年発売,
モデル620(テッサー4,5/75)は1934年まで,
モデル621(3,8/75)は1935,
622(3,5/75)は1938年までとなっていて,
1937年アウトマート登場後、併売されたが1939年からはBay1を備えたStandard Rolleiflex(スタンダードノイと言われることもある)に交代した。
重量773g(620),803g(621),778g(622)実際には3機種で重さの差を感じることはないはず。
モデル620と621はコンパー1-1/300、622ではコンパーラピート1-1/500。
ごく初期と622後期には、ファインダー右下に水準器がついている。視野がけられるが、画面の傾きを客観的に知ることができて有用。
120フィルムを使う12枚撮り。(620,621は117フィルム6枚撮りも使用可能。ただし現在は生産されていない。)
当時の120は裏紙に6x6の番号がなかったため、当時珍しかったクランクによる自動巻止め機構が装備された。
ビューレンズHeidoscop Anastigmat 3,1/75はテイキングレンズより明るい。F&H社は特許を取っていて、他社はなかなか明るいビューレンズを装備できなかった。
上下レンズ共にフィルターはカブセ28.5mm。
クローズアップレンズは同じ物を上下に付ける。1mと50cmがあり、パララックスは補正されない。
画像は左からモデル620テッサー7,5cmf4,5、モデル621(f3.8)、モデル622(f3.5)
初期モデルではオリジナルと同じ117フィルム6枚撮り共用で、117は6x6用ナンバー1を背面の赤窓で出してカウンター1セットする。
後に120も裏紙に6x6用番号が印刷されるようになり、背面の赤窓を使用することも可能で、また自動ストップの調子が悪い個体でも、赤窓巻き上げで使える。
後期モデルは117を考慮しないようになり、背面の赤窓はなくなった。
赤窓が複数ある機種では、使わないほうの赤窓には金属キャップが用意され頭出し後は閉じて漏光を防ぐようになっていたが、キャップが欠品の個体が結構ある。
現代のフィルムは赤にも感じるパンクロマチックが主流なので、特に下部から漏光しやすいため、初期モデルは下側を塞いで背面を使うほうが安全。
後期モデルは下赤窓に開閉できるカバーがつくようになり、漏光問題は軽減されている。
初期の赤窓はオレンジがかった薄い色だが、手元の622の赤窓は、濃い赤でまるで高感度が主流になった戦後版の赤窓機のよう。張り替えられている?
それと手元の622は1を出す頃合いに、カウンター窓に赤丸が出る。もしかしたら赤窓で6x9の1を見なくても装填ができるようになっているのかもしれない。
これはこの個体だけなのか、一般的なのか疑問がある。
スタンダードの後ローライフレックスはフィルム厚みを感知して自動的に1を出すオートマットになり、ローライコードはスタートマークによるセミオートマットになって、赤窓は廃止された。
画像 左からモデル620、底面と背面に赤窓。モデル621、同様、底面の赤窓にキャップ。モデル622、背面窓はなくなり、底面窓はスライドカバーがついた。回転式のカバーがついたものもある。


スタンダードは1932年1月にモデル620:f4.5、2月にモデル621:f3.8を発売、設計で克服され同年11月からモデル622:f3.5に切り替わった。
何故スタンダードにも4.5を用意したか不明だが廉価版のラインアップが要求されたのか、若干3.8は甘いためシャープな4.5で補完したという説がある。さらにf3.5は口径が細いシャッターに入れるため無理をしている説も読んだが、実写の性能はf3.8や4.5より良いと言う人もいて、何れにせよ僅差なのでご自身でお試しあれ。
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ローライドスコープ、ハイドスコープのテッサー7,5cmf4.5レンズは大変高性能なので、少なくともf4.5は優秀なのは確かでしょう。f3.8も大変よく写ります。ただしモデル620の生産数は約5千、621約4万台、622約5万台とくらべ、f4.5つきは20分の1くらいで見付けにくいのが残念です。f4.5つきオリジナルは1万3千台ありますからそっちを120改造してお使いの方も多いようです。
シャッターはローライコードでおなじみの、シャッター下方の1レバーを左右に動かしてセットとレリーズを行う形式。
シャッターセットはクランクと連動していないので、自由に多重露光できますが露光を忘れて空送りすることがあります。
また個人的にはレリーズのタイミングがとりづらいのでスナップでは狙ったシュートは難しい。
利点は、セルフコッキングだと、スプリングアシストが付いているコンパー最高速に入れたまま慌ててクランク操作するとレリーズするまで最高速から外せなくなってしまいますが、この機種は一々セットが必要なので任意に最高速と他の速度を変更出来ます。利点を感じるのは私だけ?
画像:クランク側側面。クランクの上にある小さな窓がコマ数カウンター、その右上のストラップ取り付けラグの中央のボタンでカウンター1セット。
620,621は裏蓋の縁取りが黒塗装(これらはハゲているが)だが、622はアルミ磨き出し。


1949-51,
モデルK7A
重量1080g
ビューレンズHeidoscop-Anastigmat 1:2.8 f=80mm コーティングあり
テイキングレンズZeiss-Opton Tessar 1:2.8 f=80mm T
シャッター:コンパーラピート1/400-1,B(51年半ばからコンパーラピートMX, 1/500-1,B)セルフタイマー.最高速アシストスプリングあり
絞りf2.8-22,10枚円形
クランク巻き上げ.120フィルム12枚撮り.ローライキン2で135フィルム使用可能、多重露光機構はない模様。
ファインダースクリーン:フレネルなしグリッド入りマット
シャッターボタンに腕木型のロックあり、バルブ固定には使えない。
アタッチメントサイズ:Bay2(34mm)ただし3.5Fとは位相が45度違い、2.8A専用フードが必要。
2.8A用は3.5用より深く、3.5の75mmレンズではけられが出る。


その後のモデルと同じようにオートマットの作動は確実で、スムーズに撮影が進みます。
露出計つき2.8シリーズよりも140g軽量で、Tと同じ重量なのにf2.8が使えるのは大変嬉しい所ですが、1台だけ持った印象では、大きな差を感じないというのが正直なところです。
ビューレンズは後のハイドスマートと多分構成は同じだと思うのですが、戦前モデルのほわほわなハイドスコープより合わせやすい気がします。
わたしはBayIIフードを買ったら2.8A専用で、その後でボディを購入したので普通と逆なのですが、ボディ先でフードを探すのは大変かもしれませんね。
ストラップ装着部はFやEのようなクロコダイル用と違います。ただラグに普通のナイロンを通せるので困りません。
私はストラップ付き革ケースに入れています。
2.8Aはテッサー80mmf2.8の描写性能が不評だったという説があります。
後の5枚玉6枚玉と比較して、開放では若干細部の再現性が曖昧で、明るいテッサーの限界なのかと思います。
絞るとそれなりに粗い描写が締まっていきます。
幅1mの大拡大をすれば、不満足かもしれませんが、50cmくらいなら文句は出ないはずです。


テッサーf2.8開放でここまで写るとは、まさに驚愕でした。
勿論スーパーイコンタ6やツェルト6、ハッセルブラッド1000Fでも同スペックのレンズを使っています。
その中でも最高レベルの写りでしょう。
2.8Aのテッサーf2.8は、無限遠テストでは必ずしも最高性能とは言えません。
中心から像高30%くらいまではまずまずですが、全体のコントラストは高くなく、周辺の結像は若干粗い印象です。
絞ると改善しますが、f4ではまだ不十分で、風景ではf8より絞る方が良さそうです。
ところが一貫して開放で撮影した夜景は、近景から遠景まで非の打ち所がない尖鋭さ、質感再現性に驚かされます。
この後、少数の2.8Bを経て5枚玉クセノターを付けた2.8Cに発展しますが、f2.8テッサーは実写では5枚玉に勝るとも劣らないでしょう。
Rolleiflwx 2.8A, Zeiss Opton Tessar 80mmf2.8 T,開放1/25,T-MAX400


Vogdlander Prominent I (Type127)
発売 1950-56年
35mm レンズ交換RFカメラ。
シャッター シンクロコンパー#0,1/500-1秒,B
重量 720g(Nokton 50/1.5つき950g)
へそ曲がり、いや他社に迎合しないホクトレンデル社が戦後送り出したレンズ交換RFカメラは、ビハインドリーフシャッターだった。
焦点調節は、まず標準レンズ50mmはコンパーシャッターごと前後に移動させる。
35mmと100mm交換レンズは、ベアリングと鏡胴の内外筒にある傾斜面を利用した複雑な機構で、標準レンズの繰り出し量を焦点距離に応じて変換する。
150mmは、目測である。
もう一つの100mm、そして試作で終わった24mmは、独創的な構造のミラーボックスに付ける。
だれも真似できない、する気も起きない、そのため空前絶後になったシステム。
最初のモデル(Type127と128)は、その後のモデルと区別するためプロミネント1と呼称されるが、軍艦部にはVoigdlander PROMINENTとのみ刻印されている。
ごく初期(1stバージョン)はストラップアイレットさえなかったらしい。その後アイレットがついた(2ndバージョン)。
巻き上げはノブ、巻き戻しはキーを立ち上げて行う。巻き戻し部と同軸に焦点調節ダイヤルが設置されて左手で焦点を合わせるのは、6x9のBessa IIと同じ操作系。
35,50,100の交換レンズ共通の操作位置なのは人間工学的に優れているが、100mmではボディ保持がやや不安定に思える。
1眼式距離計連動ファインダーは簡素で、約0.6倍の視野全体が50mmに対応し、ブライトフレームはない。距離計像は明快で合わせやすい。
交換レンズには外部ファインダーが必要で、35mmにはホクトレンデルが頻用した両目で見る”コンツール”、または
前後を回転させて35/50mm(50mmはマスク)と100mm(後期は150mmマスクがついた)を切り替える”ターニット3”をクリップオンするのだが
、最初のモデルにはアクセサリーシューがなく、シューアダプターを併用する必要がある。
Type127後期(3rdバージョン?)はアクセサリーシューが軍艦部に設置された。
Prominent Ia(1956-58) (Type128)
ファインダーが縮小倍率のままアルバダ式ブライトフレーム35,50,100mm並列表示にした(と書いてあるが、実物を見ていない。
果たして35mmはどんな風に入っているのか大変疑問)
巻き上げがノブから2回操作レバーになった。
アクセサリーシューつき。
海外名称はProminent Iのまま。Iaというのは日本だけの通称のようだ。
画像はプロミネントI(Type127の2ndバージョン、ストラップアイレットつき)+ウルトロン50/2(初期型、銘板クローム、外ネジローレットなし)
等倍アルバダフレームファインダー。35,50,100mm枠は常に出ている。
有効基線長が伸びたことで望遠や大口径の合焦精度が上がり実用性が増した。
大きく明快なファインダーはこの後VitomaticやZeiss Ikon Voigdlander合併後のContinaIIIなどに引き継がれた。
最初にIIを入手したので、外部ファインダーの必要が無く、ターニットは未入手です。
35,50,100(90-105)を同時表示するファインダーは、キヤノンP、ニコンS3、ヤシカYF、パクセッテIILなどにみられ、視野切替式には一歩後退していますが便利な機構です。


Nokton 50/1.5 6群7枚,重量225g
Ultron 50/2 5群6枚,重量180g
Color-Skopar 50/3.5, 3群4枚
Skoparon 35/3.5, 4群5枚,重量235g
Dynaron 100/4.5, 4群6枚,重量280g
Super-Dynaron 150/4.5, 3群4枚,最短撮影距離4m(非連動)
Telomar 100/5.5,3群5枚,最短撮影距離2m(ミラーボックス)
画像はスコパロン35/3.5、3群4枚スコパーの前方に凹レンズを置いた逆望遠タイプ。
レンズ径は大変小型。特別凄い写りではないが信頼できる性能。
ただし開放f値が暗いのに連動機構のため鏡胴が大きくなってしまった。


当初プロミネントの望遠はミラーボックスつきのテロマー100/5.5が担うはずだったが、さすがにそれだけでは一般性がないので後に距離計連動のダイナロンが供給された。
比較的コンパクトで性能もシャープ。
フードは後期供給の外ネジタイプに100mm用マスクを被せる。
近接撮影アクセサリー”Proximeter I, II"も使用出来、かなりの拡大撮影が可能。


モデル末期に距離計非連動の望遠150mmが供給された。
セットケースにはターニット3用マスクと、フード用マスクが同梱されている。
直進ヘリコイドは距離計と連動しない目測レンズ。最短は4m。
距離目盛りの最初は50m。深度は浅く、50mと無限遠は、f8にしぼらないと同じ深度に入らない。
一応、左手操作の距離ダイヤルは距離計と連動し、単独距離計として使えるが、無限の次は60ftなので、150mm開放で使える精度ではない。
近距離付近の目安には使えるだろう。
謎のひとつに、テロマー100/5.5にセットされたミラーボックスのウエストレベルファインダーを倒すとコンツールファインダーが設置されていて、
外側は100mmですが、内側に150相当の枠があるのです。
しかしスーパーダイナロンは前群が外れないためミラーボックスに付けられないのです。初期には別の150が企画されたのでしょうか。
150こそミラーボックスが必要と思うのですが


ミラーボックス専用中望遠レンズ
大判、中判用Telomar f5.5を比例縮小した構成に見える。非常に高画質だが35mm判用としては開放が暗すぎて市場訴求力があるとは思えない。
レンズは前群が取り外せ、試作に終わった24mm「ウルトラゴン」と交換できるようになっている。ただし前群交換レンズが100mmの他に発売されなかったので、単に外せるだけになってしまった。
焦点調節は前玉回転である。
スクリーンは全面マットで、絞りは普通絞りだが、絞り込んでも暗いが十分合わせられる。
フィルター径は45mmに統一され、近接クローズアップレンズ「プロキシメーター」を装着することができる。
この近接は、唯一ミラーボックスである利点が味わえる。
チムニーファインダーとプリズムファインダーが交換できる。
チムニーは倒すとコンツールファインダーになり、アイレベル撮影に対応する。
このミラーボックスは非常に特異的な機構である。ミラーはテロマーの前群と後群の間に横から入り、シャッターボタン操作で横に退避する。レンズ径に合わせて小さなミラーで済んでおり、ミラー切れも起こらない。
ミラー後方にあるレンズ後群と同じ構成が、ミラーボックス内に上に向けて設置され、スクリーンに像を結んでいる。
おそらく空前絶後の構造であろう。
返す返すも、前群交換レンズが供給されなかったことが残念だ。


両目をあけて見ると、肉眼視野にファインダー枠が重なるように見える。
外側が100mm枠。内側に対応するレンズは販売されなかった。


少なくともf1.5とf2にはそれぞれ3バージョンある。
最初のモデルは銘板サテンクローム、コーティングはブルー、フード取付はカブセで外ネジローレットがない。
2番目は銘板がブラックになり、コーティングはアンバー、フード用外ネジローレットなし。
3番目は銘板ブラック、コーティングはアンバーとパープル、フードは外ネジローレットにとりつける。
最初のブルーコートは珍しいが、これが最も写りが良いと言うユーザーが居る。
またライカL39マウントと、RFコンタックスマウントは最初期バージョンのよう。
f3.5は持っていないしバージョン違いがあるかは認識していない。写りの評判はよいらしい。
スコパロン35とダイナロン100はType127初期時代にはまだなかったのでは。
見た物はすべて標準レンズの3番目に等しい外ネジローレットを持ち、フードはすべて共通。
バージョン違いが存在するかは認識していない。
スーパーダイナロン150はあとで出て来たモデルなので、3番目と同じく外ネジローレット。
テロマー100は最初期同様銘板クローム、ブルーコート、外ネジローレットなし。内ネジ45mm。
前玉回転なので共通角形フードはどちらにせよ適合しない。

