アヤシイ工作教室
「Ai50mm/F1.8s」爪付けの巻
「Ai50mm/F1.8s」
この名称を聞いて「ピクッ」ときた方は、かなり中古カメラにハマッている方と言えるでしょう。
適当な価格のもの、特に金属鏡筒の爪付きだったら買おうと、中古カメラ屋で常々探していると
いう方は、かなり病気が進んでいると見ていいのではないでしょうか。
さて、わたしは「新品・箱入り」の文句に目がくらんで、プラスチック鏡筒製の存在を忘れて
これを買ってしまいました。(つまり金属鏡筒だと思い込んでいたわけね)
これではちょっとくやしいので、連動爪をつけて自己満足に浸ろうという不純な気持ちが、この
プロジェクトの原動力だったりします(^_^;)
1.寸法の確認
連動爪を付けようと決めたはいいのですが、わたしとしては、いかにも「改造しました」みたいに
なるのは避けたい。
そこで、ちゃんとサービスセンターで爪付けサービスをやってくれるレンズで<おためし取り付け>
をしてもらうことにしました。
こうすれば、どんな風に爪が付くのかわかるし、爪の部品も手に入り、しかもどこに穴を空ければい
いのかわかるので、一石三鳥です。
お試しレンズには、AF35-70mm/F3.3-4.5sを選びました。
Ai50mm/F1.8(US)と並べてみると、ご覧の通り、絞り環の長さ、絞り目盛りの表示位置は、ほぼ同じ
です。
2.お試し取り付けをしてみたら…
試しにサービスセンタで「爪の部品、売ってくれない?」と聞いてみたのですが、どうもそういうこ
とはやりたくないような感じでした。
「ダメ」とは言わなかったのですが、工賃浮かす為に自分で取り付けるのか?みたいな質問をされた
ので、それ以上は深追いするのはやめました。(気が弱いし)
以前聞いたことですが、Nikonとしては、カメラの精度に関わる部品については、単独の販売はしない
そうです。つまり、ユーザが自分でとりつけたりするようになっている部品は販売するが、それ以外の
部品は販売しないそうです。
さて、爪をつけたAF Nikkorは、ご覧の通りかなり格好がよろしくありません。
爪をつけたAF35-70/F3.3-4.5s
絞り値表示が、半分以上隠れてしまっていて、いかにも「改造しました」みたいです。
そんなわけで、ちょっと爪付けをためらってしまいました。
ちなみに、最近のAF Nikkor(Dタイプレンズなど)では、絞り環の長さが多少長く、爪が目視用の絞り値
表示を隠さないようになっているように見えます。もっともわたしは、この他の爪付きAF Nikkorを見た事
がないので、飽くまで予測なのですが。
4.どこにつける?(1)
「ここでやめては男がすたる」とばかりに、気をとりなおして、なんとかならないか考えました。
「絞り値が隠れるのがイヤだったら、隠れない位置にずらして取り付ければいい。」
しかし、そうは問屋が卸してくれる訳がありません。そういう位置に爪を付けると従来ボディにもAiボディ
にも付かなるという、無意味な改造になってしまいます。
で、「どこまでずらせるか?」
爪を両面テープで絞り環に貼り付け、いろいろ試した結果、絞り値表示の下1/3程度ならなんとかいけそ
うな感じです。
目安としては、4の数字の水平線に爪の縁が接するくらいの位置です。
3.どこにつける?(2)
前後位置は決りましたが、さて、左右は?
そんなもん、F5.6の位置に爪の中心あわせりゃいいだろうって?そりゃそうなのですが、問題はなにを基準
にF5.6の位置を決めるか?なのです。
絞り環の絞り値表示は、何かの都合で、ずらしてある事も考えられるので、アテにはなりません。
結局、絞り値をF5.6に合わせ、絞り値指標(取付環に打ってある黒ドット)に爪の中心を合わせることにしま
した。本当は、他の位置決め手段を考えたのですが、これについては後程。
4.さあ、爪をつけよう!
- ポンチ穴を開ける
爪の位置が決ったら、ここぞと思う位置に、穴開け用のポンチ穴をつけます。
先の尖ったもので、ちょいと押し付ければ、OK
- 取り付け用の穴を開ける
取り付け用の穴は0.6φのドリルで開けました。
しかし、電動ドリルや、ハンドドリルを使ってはいけません。相手はプラスチック。あっと言う間に穴が
開いて、鏡筒まで突き抜けたりとか、手元が狂って変なところに穴を開けたりしないとも限りません。
ドリルの歯を親指と人さし指でつまんで回し、穴の深さを確認しながら、穴を開けます。穴の深さは2mmちょっ
と。爪付け用のビスの長さを目安にすればいいでしょう。予め、穴の深さに相当する長さだけ、ドリルの歯
に色をつけておくとわかりやすいと思います。
- 爪の取り付け
穴が開いたら、あとは爪をつけるだけ。
しかし、あせっていはいけません。締まり具合を確かめながら、すこしずつ取り付けネジを少しずつ回して
いきます。ネジがまわりにくくなったのに、爪が固定されないようだったら、穴の深さが足りない証拠です。
無理にねじ込むと、バカ穴になるので、注意しましょう。
完成!
5.念のため、確認しましょう!
確認は、従来ボディのカメラと、Aiボディのカメラで行います。
Aiボディでは、連動爪が他の部分に干渉しないかどうかを確認します。具体的には、ペンタプリズム部の
オーバハングに引っかからないかどうかです。
わたしが持っている中ではFE2がもっともオーバハング量が大きいので、これに引っかからなければOK
としました。
従来ボディでは、当然、連動爪が、連動ピンに噛み合って、ちゃんと開放F値セットができるかどうかを
確認します。
ここは、Nikomat-MLらしく、Nikomat FTnにつけてみました。
6.実は、治具を作ったんです
穴開けの基準としては、最小絞りガイドを使う方法が考えられます。そこでこんな治具を作ったんです。
右端を、最小絞りガイドに合わせてやれば、穴開けの位置が決るのですが、きちんと固定する方法がなかった
のと、治具の精度に自信がなかったので、今回は使いませんでした。穴開けしたあとに確認したら、一応は合って
いました。
参考までに、寸法を書いておきます。ただし、この寸法を元に穴開けして、変な場所に穴が開いてしまっても
責任はとれませんので、あしからず。
<<<あとがき>>>
さて、Ai50mm/F1.8sを欲しがるときは、たいてい「気軽な持ち歩き用に」というもっともらしい理由がある
ようです。
じゃ、爪付きを欲しがる訳は?そりゃ、「従来ボディにつけて使いたい事だってあるから」
しかし、ちょっと待って下さい。連動爪を必要とする従来ボディのニコンカメラに「気軽な持ち歩き」に
適したものがあるのでしょうか?ないですよね。
その上、ハマってしまった人は「やはり、ボディにあった時代のレンズをつけるのがいい」なんて言って
ますから、Ai50mm/F1.8sに連動爪を付けたところで、使いっこないんです。
と、いうわけで、正に「自己満足の為の工作」だったのかも…
Thanks: やまださん
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