3Dプリンタによる写真アクセサリ制作

写真・カメラ用アクセサリに限らず,一般的に一定の需要があるものは製品化され容易に入手できますが,過去の製品のための専用アクセサリや特殊性の高いアクセサリは存在しなかったり,あったとしても非常に数が少なく入手困難であったりします.それに対し近年3Dプリンタ技術が発達し,1個から安価に成形品を制作することが出来るようになりました.そこで,いくつか私が設計した写真用アクセサリを紹介します.それぞれのアクセサリは DMM クリエイターズマーケットに出品し,必要であればリンクから発注できるようにしたのでよければご利用ください(私のほうで一定数を制作し送付する方法に比べ,直接 DMM へ発注したほうが送料が浮くためです).

中判カメラ用ピント調整治具

中判カメラを整備・調整するときに,ピントを調整するための治具です.以下のような目的に用います.

カメラには,フィルム位置を決める方式として直圧式とトンネル式の2種類がありますが,多くのカメラにおいて,そのどちらにでも自動的に対応するようにできています.

この治具を使用するには,ニコンの FE/FM2, FM3A 等のためのフォーカシングスクリーンを用意する必要があります.汚れたり傷が入ったもので十分です.これを,本来の向きとは表裏を逆にして(マット面が下になるようにして)この治具に載せます.治具には,これらのスクリーンについた突起が収まるくぼみも付いているので,このくぼみが合うようにスクリーンを載せると間違えることはありません.

上の写真は,エンサイン オートレンジ 16-20 の調整をしているところです.載せたスクリーンが浮かないように,マスキングテープのような糊が残りにくいテープで止めてください(きちんとスクリーンがはいると,周囲とスクリーンの手前面がツライチになるようになっています).また治具全体も落ちないようにカメラに止めると楽に調整ができます.

治具の設計は上の図のようになっています.スクリーンのマット面は赤の点線の位置にセットされます.直圧式のカメラでは,画面の周囲の枠が B の位置に接することになります.また,トンネル式(フィルムが巻きぐせによって圧板に押し当てられることでフィルム位置が決まる方式)では,A の部分が圧板の位置を決めます.フィルムの位置は,圧板の位置から裏紙とフィルムの厚みだけ前進した位置になるため,フィルムの厚み D (富士フイルムの ACROS での実測値0.20mm)だけ A と B の位置に段差を設けてあります.面 A と B は,それぞれ以下の図の A, B に対応しています.

トンネル式と直圧式の違いの詳細については,こちらを参考にしてください.

幅 X は,画面(撮影範囲)がかなり小さめのカメラでも問題ないよう 54mm にしてあります.Y はフィルムの幅に一致しており,Z は多くのカメラを採寸して検討した結果 68mm になっています.また短辺は40mm(画面内に入る部分は38mm)です.実際に調整したいカメラで使えるかどうかは,お手持ちのカメラの寸法を測って確かめるか,治具を加工してください.

なお,圧板に段差が付けられているカメラ(例:コダックメダリスト)など一部のカメラではピント位置がずれるため,なんらかの補正が必要となります.

こちらから注文できます.

ブロニカに引き伸ばしレンズ,0番レンズシャッターを取り付けるアダプタ

フォーカルプレーンシャッター内蔵型のブロニカ(ブロニカ D, S, S2, EC, EC-TL など)に一般的な引き伸ばしレンズ(ライカスクリューマウント:L39で取り付けるタイプ)、または0番のレンズシャッターに取り付けられた大判用などのレンズを装着して撮影するためのマウントアダプターです。ブロニカにはシフトやティルトが出来る高機能なベローズが用意されていますが、純正レンズはイメージサークルがさほど大きくないため移動量が限られてしまいます。その点、大判用レンズはもちろん、引き伸ばしレンズもより大きなイメージサークルに対応したレンズが多く揃っているため、より自由度の高い絵作りが可能になります。

装着例では,ローデンシュトックのアポマクロシロナー 120mm F5.6 (コパル0番シャッター付き)をベローズを介してS2に装着しています。ニッコールAMEDやアポマクロシロナーのような接写用アポレンズは画質も高く、またボディ側をバルブにしてレンズシャッター側を用いることでブレを抑えることも出来ますので、高精度な接写には好適だと思います。なお無限遠にピントを合わせたい場合は概ね120mm以上のレンズでなければならないようです。

2点目の装着例では、EBCフジノンEX 105mm F5.6 の引き伸ばしレンズを、やはりベローズ付きのS2につけています。この例では無限遠は出ません。105mmクラスの引き伸ばしレンズは69判をカバーしますので、やはり純正レンズを用いる場合に比べてアオリの自由度は増します。ただしマウントによるケラレには注意する必要があります。

3Dプリントサービスは出力物の体積が大きいほど料金が上がりますが、これぐらい小さいパーツですと基本料金の割合がほとんどになってしまうようなので、この商品では2つのリングをセットにして、細い線で2つの部品を接続してあります(DMM のプリントサービスでは、1つの商品が2つ以上のパーツで構成されていると出力できませんので、つなげてあります)。ニッパーやカッターナイフ等で簡単に切り離すことができ、また裏面で繋いであるので取り付け時の外観や精度には影響しません。

いずれも黒色ナイロンで出力すると十二分な強度があります。0番シャッターを取り付けるアダプターは、レンズ取付部の厚みが約 2mm あります。

こちらから注文できます.

NIKKOR-O 2.1cm F4 用リアキャップ

ミラーアップしてニコンF,F2やニコマートに取り付ける超広角レンズ,NIKKOR-O 21mm F4 はレンズ後部が突出していて普通のリアキャップが装着できません.しかし純正のリアキャップは単体で見つけることが非常に難しいため,3Dプリンタで制作してみました.また,せっかくだからと,このレンズだけの独特の仕様である,レンズの空回りを防ぐ内爪もつけました.この内爪はマウント内でレンズ後部の向きが変わることを防ぐためのもので,キャップには必ずしも必要ありませんが,フォーカスリングの動きを確かめるようなことが可能になります.

キャップですので,どの色で出力しても構いませんが,白や淡色では汚れが目立ちます.また,ミラーアップが必要な(レンズ後部が突出した)他のレンズでも付くものがあるかもしれませんが未確認です.

また,純正のキャップと同様に専用のファインダを取り付けられるキャップも制作しました.さらに,ファインダ全体をほぼ覆う保護カバーも装着できるようになっています.

純正品とは異なり,簡単なロックがついていて脱落防止としています.取り付け・取り外しも純正品より弱い力で可能となっています.ファインダ部分のカバーも抜き差しできるようになっています.

シューなしのものはこちら, シュー付きのものはこちらから注文できます. シュー付きのものは,カバーと本体が細い線でつながっていますので,ニッパー等で切り離してご利用下さい.

ブロニカにFマウントレンズを取り付けるアダプタ(接写用)

フォーカルプレーンシャッター内蔵型のブロニカ(ブロニカ D, S, S2, EC, EC-TL など)にFマウントのレンズを装着し,接写を行うためのマウントアダプタです.ブロニカには接写専用のレンズがありませんが,このアダプターを使うとマイクロニッコールなどで等倍付近の撮影が簡単に出来ます.上の写真はそれぞれ,Ai Micro-Nikkor 55mm F2.8S, Ai Nikkor 50mm F1.8S を装着したときの例です.

使用するには,この3Dプリンタ出力に加えて以下の部品が必要になります.別途ご用意ください.

BR-3 は 52mmの雌ネジとFマウントを変換するリングで,現行品ですので新品が容易に入手できます.例えば yodobashi.com であれば,税込み・送料込みで 1580円で購入できます.ネジは,ホームセンターでいろいろな種類のネジが詰め合わせになったものが一袋 200円前後で売っています.ものによっては,必要な径・長さのネジが2本しか入っていないものもあるのでご注意ください.

この3Dプリンタ出力に BR-3 から外したマウント座金を乗せ,M1.7 のネジとナットで固定します.側面からナットを差し込む穴が明けてあります.カメラに取り付ける側は,ブロニカのマウント内に刻まれた 57mm P1 のネジに適合するように作ってあります.ナイロン製で十二分な強度があります.

こちらから注文できます.

Lマウント 13mm 延長リング

エルニッコール50mmF2.8N(プラスティック鏡筒の引き伸ばし用レンズ)をミラーレス一眼カメラに取り付けて撮影するために用いるリングです.ライカLマウントの雄ねじと雌ねじを備えたリングで,光学的バックの延長量は約13mmです.フルサイズデジタル一眼カメラ(ソニーα7等)に取り付けた場合でも,このアダプターによるケラレは生じません.もともとナイロン粉体をレーザで焼結したものですので内面反射は大きくありませんが,内部に溝を切って反射を防止する対策がなされています.

使用例の写真では,ソニーNEX-5Rにヘリコイド付きマウントアダプターを装着し,さらにMLリングによりMマウントからLマウントに変換したものにこのリングを取り付けています.このように,お手持ちのカメラとLマウントの間のアダプターは別途ご用意下さい.引き伸ばしレンズ単体にはヘリコイド(ピント調整機構)が備わっていないため,このようにヘリコイド付きのマウントアダプターを利用することが前提となります.引き伸ばしレンズの個体差に対応するため,必要な厚みよりも少し(1mm弱)薄めに作られています.これにより若干オーバーインフになる(ヘリコイド付きマウントアダプターを少し繰り出したところで無限遠にピントが合う)点はご了承下さい.

「ナイロン ブラック」を素材に指定して出力したものが,手持ちのLマウントや当該エルニッコールレンズに正常に取り付けができることを確認しています.僅かに柔軟性がある素材ですので,無理に斜めにねじ込んでいっても装着できてしまうことがあります.マウントのネジに対して,きちんとまっすぐにねじ込まれていくか注意しながら装着して下さい.正しく装着されたときの強度は十二分にあります.

このエルニッコールは引き伸ばし作業時に絞り値を照明するための窓がマウント側に設けられていますが,アダプターの内径を細めにしてこれを大部分遮るようにしてあります.クリアランスを確保するために100%遮光されるわけではありませんが,実用上はまったく問題ありません.どうしても気になる方は,レンズ後部の採光窓にパーマセル等を貼って遮光して下さい.

この写真(京都 蛸薬師堂)は,ソニーα7にこのレンズを装着し,F2.8開放で撮影した時の撮影例です.開放から非常にまとまった画質で撮影できます.

こちらから注文できます.