Kodak Retina IIa / Schneider Retina-Xenon
2000年3月
解説動画
レチナの内部
この黒い部品は,向かって右側の,大きいほうのファインダ窓の前のレンズを傾ける働きをもちます.普通の距離計は,小さな窓のほうの像を動かすのですが,レチナは反対に大きい像を動かす仕組みです.同時にパララックス補正もされます.
レンズボードから軍艦部への伝達機構は,折りたたみ時に退避されなければなりません.そのため,レールが斜めに切ってあり,折りたたみ時には,軍艦部内部へ繰り出し量を伝達するピンが向かって左方向へ退避されるようになっています.
Retina IIa 視度補正改造
この時代のドイツ製カメラには多いそうですが,レチナもファインダの視度が無限遠のあたりに設定されています.このせいで,「レチナの距離計は見難い」という誤解を受けている節がありますが,視度をきちんと合わせると,S型ニコンやマキナ程度の見易さは得られます.(さすがに実像式の距離計のように,距離計像の境界線はくっきりとはしませんが,これは構造上の制約なのでしかたありません.)一度手持ちの視度補正レンズを用いて試してみてください.たいていの距離計カメラは視度をきちんと合わせれば非常に合わせやすいものです.さてレチナには,専用の視度補正レンズがない(もしくは,事実上ない)のが難点です.外に貼り付けるという手がありますが,裏蓋の開閉と,フラッシュの挿入を両立させるためにはそれなりに小さいものを探す必要があります.レチナハウスで聞いてみたところ,「当店で発売したものは,適当な小さな視度補正レンズを持ち込んでいただければ,修理屋に入れさせてます」とのこと.そこで,自分で入れてみました.
ついでに距離計の調整と内部の掃除をして,ますます見やすくなり,良くなりました.
Retina IIa 試写の結果
拡大(1350DPI)
拡大(1350DPI)
一部拡大1,一部拡大2
レンズシャッターカメラは絞りの枚数が少ない場合が多いのですが,このレチナは 10枚も絞りがあり,絞ったときの画像の乱れが少ない.ハイライトの入るシーンでも安心して使えます. 口径蝕は F4 ぐらいでほぼなくなります.
拡大(1350DPI)
背景ボケが非常に自然で美しいですが,前ボケもこれに劣らずいい感じです.
ピントは前の「目」に合わせたつもりですが,距離計が信頼に足るものであり安心しました.
カラーポジフィルムでのテストもしてみました.
拡大(1350DPI)
拡大(約 5800DPI)
拡大(1350DPI)
フィルム:Kodak T400CN, Fujifilm ASTIA100
スキャナ:Nikon COOLSCAN-II, Nikon COOLPIX910 + テレスコマイクロ 8×20D
Accessories for Retina IIa
サード・パーティ製レチナ用アクセサリ,および,流用アクセサリの紹介です.
接写装置(プロクサー)
PLEASANT AUTO-UP I for RETINA IIa
レチナ IIa は仕様上,最短撮影距離が3.5ftですが,実際にはフォーカスリングの 目盛りが 3.5ft までであり,そこからさらにかなりフォーカスリングが回るので, 約 2.5ft 程度まで寄れるようです.
このアクセサリは 1dp のクローズアップレンズになっているようで, 1m までしか寄れないカメラに装着すると,1m〜50cm まで寄れるようになります. レチナでは 40cm 程度まで寄れるようです.
別に 2dp の AUTO-UP II というのがあるようです.
見て分かるように,クローズアップレンズ部,および距離計補正部はともに まったくのノンコートのようです.ちなみにこの世代のレチナは薄くコーティング されており,この後の IIIc などからより濃いシングルコートとなります.
裏面は反射防止のため黒色塗装です.ここがめっきだと光って見づらくなります. 距離計補正部の左上の突起は近接時のパララックス補正指標です. E.Pマークがあります.これは輸出用だったことが分かります.
フード
Konihood
レチナのレンズはノンコートではありませんし,4群6枚構成であり, それほど空気界面が多いわけではありませんが, やはり逆光には弱いといえます.
そこでフードですが,これがなかなか難しい. レチナ IIa のフィルタ径は 29.5mm,外径は 32mm のようです. このフィルタ系はレチナ系では多いようですが,他にはほとんどありません. フィルタは入手困難というほどではありませんが,(例えば大阪では八尾富クラシック店 においてあります)内径に適合するねじ込みフードはほとんど無いようです.
外形にマッチするかぶせ式もあまりありませんが,たまたま見つけたこのコニカ用の フードがうまく使えるようです.これは for KONICA・PEARL となっています. コニカではおそらく IIa とか IIIM の時代のものでしょう.
レチナ IIc, IIIc などのモデルではフードはバヨネット式に取り付けられますが, これはレチナハウスでオリジナル制作のものが売っているようなので, これを購入するのがよいでしょう.私は純正品を委託で1万円で見ました.
結論からいうと「ぎりぎりセーフ」というところか. 目いっぱい絞り込んだ場合で,角の部分はぎりぎり蹴られないというところ. 逆にいえば,絞りを開いた場合には蹴られるわけです. 開放では,直径約 30mm の円より内側は蹴られなし.そこより外は次第に蹴られ, 四隅の部分で 50%程度蹴られているようです.つまり周辺光量低下が助長されます. つまり考えようによってはアウトでしょう.
なお近接時は問題ありません.
レチナ関連リンク集
Walker Mangum 氏のThe Kodak Collector's Page.(英語)コダックによる公式な全コダックカメラリスト(英語).
撮影:Nikon COOLPIX 910