AF Zoom Nikkor 28-80mm F3.3-5.6G

シルバーとブラックの2つのバリエーションがあった。
右のブラックはGタイプに対応していないカメラで使用できるよう、
Ai連動レバーを動かすための突起を取り付ける改造を施している。

当時、このレンズは優秀な小型カメラ、ニコンU等に組み合わせて売られていた。
シルバー鏡筒のモデルはUの色目によく合う。
なおこの写真は、ブラック鏡筒の同レンズで撮影した。
全体にシャープかつ周辺部まで均一で、ボケも自然な上、色収差による色づきも目立たない。
クリックするとD800Eで撮影した元画像が表示される。
正直に言うと、やはりカメラやレンズには所有し使用することそのものにも喜びがあると思う。そしてそれには、レンズの外観や操作の質感が多少なりとも関わってくる。その点で、このレンズは全く媚びてくるところがない。カメラを持ち出すときに、ある1本のレンズを選ばねばならないとき、どうしても選択肢から外したくなる、そういう位置にあるかわいそうなレンズである。インターネットを検索してみても、多くのユーザが「安かろう悪かろう」というような判断をしており、その真価を見抜いている人は僅かなようだ。

D800E (RRSのLプレート装着)に取り付けた例。ブラックモデルのほうが似合うが、
シルバーモデルのほうが多く出荷されているようだ。
もっとも、このレンズの優秀さを既に見抜いていた先人も多い。例えば Ken Rockwell 氏は、このレンズのレビューにおいてその性能を高く評価し、またこのレンズをNikon's 10 Best Lensesに挙げている。またニコマートMLでもその意外な優秀さは時折指摘されていた。しかしそのチープな外観と触感、仕様から、そうはいってもあまり顧みられていないレンズであるのには違いない。2001年当時の世間の反応は、まず第一に絞りリングが無くなったことの衝撃が大きく、それだけで選択肢にも挙がらない、という風情であった。またその後、DXフォーマットのデジタル一眼レフが急速に普及したこと、同時にボディ内にAFモーターを持たないボディが増えたことで、さらにこのレンズを手に取る人が少なくなったと思われる。しかし今やGタイプは当たり前となり、レンズ内にAFモータを持つフルサイズ機では実使用に一切問題ない。多くの本数が発売されたことも手伝って非常に安価で豊富に見つけることができる。私も1本目は発売からさほど経たない2003年に5800円で購入しており、もう1本は最近、ニコンUとセットでなんと3000円で入手した。
マクロ撮影時のパフォーマンス

望遠端・最短撮影距離(つまり最大倍率)での作例。
仕様上では最大倍率が 1/3.5 倍とされているが、実際にはもう少し寄れる。

上の画像からの等倍切り抜き。中央部分は十二分に高解像度で、
花びらと背景のふちに不自然なエッジが出ることもなどもなく、高品位な写りである。

レンズテスト
ここではD800Eで撮影したフルサイズ画像を掲載する。RAWを Photoshop 6.0 で現像したが、その際に倍率色収差は除去する設定とし、その他は細かな露出度の違いを調整した程度である(ニコンデジタルカメラのJPEG画像では、無条件かつ自動的に倍率色収差が除去される)。今回は相対的なテストは行わなかったが、他のレンズとの比較は、従来実施したこちらなどを参照いただきたい
28mm時
28mm F3.3開放28mm F5.6
28mm F8
開放から優れた画質である。開放から中心部は十分な解像度を持つ。周辺へ向かうに従い徐々に画質は下がるが、その定価の度合は小さく、付近等な流れもない自然さの高い描写である。1段絞ると、中央部でわずかに見られたコントラスト低下は解消し、両端の画質も改善しほぼ均質な画質となる。F5.6とF8では画質に大きな変化はない。総合すると、F3.3開放から十分に使用可能な画質で、F5.6に絞ればほぼ万全といえる。
50mm時
50mm F4.5開放50mm F5.6
50mm F8
開放から十分な解像度を持つが、若干ハロがあり、高輝度部(空)に近い部分で青系のにじみが見られるが、2/3段絞ったF5.6ではそれも解消し、アンテナのような細い物体でも色づきのない高いコントラストの像が得られる。画質の均質性は極めて高い。開放とF5.6での差異を見出すことが出来る部分はわずかであり、F8とF5.6の差を指摘するのはかなり難しい。総合すると、開放から十分な画質であるが、輝度差の大きいシーンでは 2/3段絞るとコントラスト低下を防ぐことができる。
80mm時
80mm F5.6開放80mm F8
やはり開放絞りから中央部は高い解像度を持つが、F8に絞ることでより万全なコントラストを得ることができる。それに対して周辺部はわずかに甘くなるため、風景のような無限遠の(つまり、光学的に平坦な)被写体を隅々までシャープに撮影するには1段絞ると良い。合焦部以外がぼける立体的な対象では開放でも十分な画質であるが、やはり1段絞ると万全なコントラストが得られる。総合すると、やはり開放から十分に使用でき、周囲まで均質な画質や、高コントラスト部分でのハロを除去するためには1段絞るとよい。
以上見てきたように、このレンズは開放から非常に整った画質を発揮し、特に中央部の解像度が開放から十分であること、周辺部でも目立った流れなどなく、自然な画質低下はあるもののその度合が小さいこと。またどの焦点距離域でも開放絞りから1段絞るとコントラストや周辺画質が改善し、D800Eの画素数でも十分満足の行く画質が得られると言える。。
ぼけ味
80mm F5.6開放80mm F8
広角側ではボケ量が小さいためボケ味が目立つことは少ない。また望遠端でもマクロの作例のように近接時はスムーズなボケ味で自然である。中距離でボケ量が小さい時は若干の2線ボケ傾向を示す。上の作例(撮影距離:約4m)では、どちらの絞り値でもその傾向が見て取れる。写真からは、開放F5.6とF8では合焦部の画質に大きな違いがないこともわかる。背景との分離がよく、立体感のある描写が得られる。