ピロート・スーパー (PILOT SUPER) はKWの一眼レフカメラ「ピロート6」の後継機種で,以下のような特徴がある戦前の一眼レフカメラです.
・レンズ交換可能
・小型軽量(Ennatar 75mm F4.5 付きで実測646g)
・マルチフォーマット(マスク装着による66判と645判兼用)
・ミラーシャッター:B, T と 1/20, 1/50, 1/100, 1/200 の4速
・多重露出防止機構付き(手動による解除も可能)
現代の目で見たときのこのカメラの最大の特徴は,その軽さでしょう.646g は多くの66判一眼レフ(1400〜2000g)に比べると圧倒的に軽く,二眼レフでも700gを切るものはプラスティック筐体であったりピント合わせが出来なかったりするものがほとんどです.スプリングカメラでも距離計が付いているものはもっと重いもののほうが多いぐらいです.ピロートはアルミダイキャストボディをメッキや塗装,貼り革を施した鉄の薄板で覆う構造で出来ており,材料で軽くしたというよりは合理的でシンプルな構造により軽量化を達成したという感じを受けます.
シャッターはイハゲーの35mm判一眼レフカメラ「エクサ」によく似たミラーシャッター方式で,先幕の代わりにミラーが,また後幕の代わりにドラム状の薄板がそれぞれ動くことで露出時間をコントロールします.普通の一眼レフとは違い,シャッターセット中(ミラー復元中)も含めて完全に遮光する必要があるため,ミラーの左右などからの漏光を防ぎつつ軽快に作動させる仕組みもエクサによく似ています.ただしこの構造では幕速が速く出来ないため最高速は1/200秒止まり,またスローシャッターのメカを持たないことから最低速も1/20までとなっていますが,手持ち撮影をする上では十分でしょう.幕の劣化などの心配がないのはよい点です.
ただしこのシャッターの構造からマウント径を大きくすることが出来ず,ネジマウントの内径は約30mm(おそらく M31 P0.75 のネジ)と小さいため,望遠レンズを付けるには蹴られが問題になり,また広角レンズを装着するにはレトロフォーカス型のレンズが必要となるので,この時代(1939年ごろ)の技術では交換レンズの設計は困難であったと思われます.そのためか,75〜80mmの標準レンズ域のレンズの他には,105mm の交換レンズしかなかったと言われています.戦前のカメラですので,レンズはノンコートで,おそらく全ての標準レンズがトリプレットの前玉回転式です.私の個体には Enna の Ennatar 75mm F4.5 がついていました.
巻き上げは赤窓式ですが,それゆえフィルム送り量はユーザーが自由に決められますから,マスク交換により簡単に645判としても使えるのも一眼レフカメラとしては特徴的かと思います.私が入手した個体は幸いな事にこのマスクや取扱説明書(英文)が付属しており,フィルムレールの内側にマスクを装着する手順も説明書に記載されていました.
巻き上げとシャッターチャージは連動していませんが,多重露出防止機構が備わっており,シャッターダイヤルを正面から見たときに11時の位置にあるレバーを上に動かすことで解除することも出来ます.シャッターダイヤルの7時の位置にあるノブはT(タイム露出)のためのもので,このノブを上を動かすとシャッターを切ったあと後幕がロックされT露出となりmす.このノブをチョンと下へ押すと解除されます.シャッターボタンはシャッターダイヤルからみたときの4時の位置にある少し大きなノブで,これを下へ下げるとシャッターが切れます.その上のほうに標準的なレリーズケーブルを差し込めるソケットもあります.背面の赤窓は,まだ645専用の数字に対応しておらず,69判の指標を二箇所に順に出す方式になっています.
シャッターダイヤルは回転式で,バルナックライカ等と同様に引っ張って回すことでシャッター速度を変化させます.シャッターダイヤルの側面と上面の二箇所にシャッター速度が記載されており,上から見た場合でも,また側方から見た場合でもシャッター速度を確認できます(上から見た時は巻き上げ後しか確認できませんが,側方から見た場合は,中央のネジに打たれた指標によりいつでもシャッター速度を確認できます).
フィルムは二眼レフと同様に底面のレンズよりに装填し,後方上へ巻き上げられます.このフィルム装填室の配置とミラーシャッターの動きなどの関係が良く出来ているため小型化が達成されていますが,二眼レフのミラーの後ろにある巻き上げ側のフィルム室だけはどうにもならず,後方にはみ出てしまっています.これが少し不格好に見えますが,巻き上げ操作をするには都合が良い感じです.
ファインダは固定式で,ルーペを上げるとほぼ密閉されるため,暗いスクリーンではあるがピント合わせを助けています.スクリーンにはフレネルレンズがなく,ルーペを下げて,少し離れて覗くと全体の構図を確認できますが,ルーペを下げると周辺部分が暗くなってしまいます.他機種のスクリーンを切って装着するか,フレネルレンズを載せると使いやすくなると思いますが,まだトライしていません.スクリーンには上下に645判で撮影するときの目安線がついています.ファインダフードの前の蓋を押し込むと透視ファインダになるのは多くの二眼レフと同様ですが,フィルム室があるため眼が近づけにくく覗きにくいといえます.この透視ファインダの前面には横向きの桟がついているので,やはり645判での撮影の目安になります.
私が入手した個体は多重露出防止機構が故障しており,レンズが曇っていたりファインダフードが歪んでいたりとあちこち手を入れる場所が多くありました.レンズマウントにレンズが固着していて外れなかったり,多重露出防止機構は内部でピンが外れていたりしましたが一通り手を入れ,撮影ができるようになったようです.試写結果は追ってウェブサイトに掲載したいと思います.一眼レフですので何らかのレンズが取り付けられれば撮影は可能ですので,引き伸ばしレンズを適宜交換して使ってみると面白いかと思い,L39への変換アダプターの制作を予定しています.
ゆうれいです、ちゃんと生きてました。
手元にビロートスパーがやって来ました。
このカメラの血の繋がらない子孫である長城を愛用しておりますので
ご先祖様には興味がありました。
かなり外観はやれておりますが、一応ちゃんと動いている様です。
レンズもバッチリ曇っておりましたが前後の玉を外してクリーニングすると
思いのほか綺麗になりまして、それなりに写りが期待できそう?
操作系も長城とほぼ同じな事からとっつき易そうです。
近々に試写をする予定ですが、どんな写りをするのでしょうか
ちなみに長城は魔改造をしていますので、パッと見正体不明なカメラになっております。
しかし,これは・・・魔改造しすぎです・・・笑 最初「ブロニカETR,なるほど,横位置645判か」などと勝手な誤解をしておりました..
ピロート・長城は,最軽量中判一眼レフの1つとして,いろいろ使いまわしたい気持ちがおきますね.純正レンズがノンコートばかりということもあって,どうしてもいろんなレンズを付けたくなります.しかしレンズマウントの直径が小さく,蹴られを考えるとフランジバックにも制約があり難しいです.いろいろ試して,引き伸ばしレンズで撮れるように,とかやってみたのですが,結局のところこんなふうにボディ改造するのが一番の近道なのでしょうね.
私も吃驚しました。最初にマガジンを外したETRにタクマー75?と見間違え、読んでもっと吃驚。
ミラーシャッターなのでフォーカル機用レンズがいけるのはわかりますが、凡人が開口部で尻込みする所を突破。
多分スクリーンも見やすいものに交換しておられるでしょうね。
巻き上げノブ交換、重心位置に合わせアイレット移動。
どれも合目的で使いやすそうな改造です。
軽量645でレンズ自由度が高いので、一見奇矯ですが実用的なのでしょうね。
ピロートスパー撮影をしたのですが、盛大に漏光でかぶってしまいました。
裏蓋のテレンプもカチカチに経たっておりましたので、予想はしておりました。
本業が忙しくまだ弄っておりません。
PCも調子が悪く、先日入替をしましたが、まだ立ち上がっておらず画像のスキャンもままなりません。
ちなみにピロートの隣の変なカメラは長城(GREAT WALL)ですので、ピロートの改造機では御座いません。
今度、オリジナルの長城が手元にやって来る事と成りましたので
何時かレポート致します。
些か脱線しましたので、長城についてはまた改めて。