フォクトレンダー アヴス

1910〜1930年ごろはまだ乾板やシートフィルムが使われており,それに適した汎用カメラとして「ハンドカメラ」または「プレートカメラ」のように言われる箱型・レール引き出し式が多く作られていました.その中でこのアヴス(アブス,avus)はフォクトレンダーの中ではベルクハイル(bergheil)とヴァーグ(vag)の中間に位置する中級機で,ベルクハイル(後期型)のようにレンズ交換は出来ませんが,上下左右のシフトができて撮影の点では大きく変わらないモデルです.

ベルクハイルにはヘリアーのついたものが多いのですが,アヴスには一般にスコパーが付いています.6.5x9cm(大名刺判),9x12cm, 10x15cm の3種類の大きさのものがあったようですが,これは最も小さいタイプで,レンズは普通 10.5cm F4.5 などが付いています.

これらのカメラはシートフィルムのホルダーなどを使って撮影することが前提ですが,そこにはめ込める Patent Rollex などの汎用ロールフィルムホルダーを使えば 120 フィルムでの撮影が可能です.ティルト・スイングはできませんが,ピントグラスで精密にピント合わせし,等倍付近までの近接撮影が出来ますし,そういう撮影が出来るカメラとしては最小構成かと思います.

今回はそのようなキッチリした撮影ができる機材として使いたかったことと,標準のスコパーやヘリアーよりもシフト時の均一性を求めて,元の状態に戻せるという前提の作業により,リンホフ用のコンバーチブル・ジンマー 105mm F5.6 を取り付けてみました.コンバーチブル・ジンマーは前玉を外すと望遠レンズ(このレンズの場合は 185mm F12 のレンズ)としても使えるという触れ込みのレンズで,その際はソフトレンズ的な効果があるとされています.

このアヴスに付いているレンズは0判シャッターかと思っていたのですが,よく見てみるとボードの穴が0番の穴よりも小さく,約30mmでした.つまり0判と00番の中間ぐらいの直径です.リンホフ用コンバーチブル・ジンマーは00番のシャッターですのでボディに手を加えることなく装着が出来ますが,穴が大きすぎるために絞りがうまく動くように取り付けるには,シムを薄板から切り出すなどいろいろな工作が必要でしたが,結果的に写真のようにうまく取り付けることができ,蓋も閉まります.古いレンズは全長が極めて短く,この手のカメラもそのようなレンズを前提にしているので,ホースマンやセンチュリーグラフィックなどの 105mm レンズは見るからに無理ですが,このジンマーは00判シャッターに収まっていることもあって小さく,なんとか蓋に干渉せず畳めますし,後ろ玉もピントグラスまでにいくらか余裕があります.テッサー型・ヘリアー型よりも包括角度の広いレンズで薄型のものは,ダゴール,アンギュロン(スーパーでないもの),アーターぐらいになりますが,フィルタ枠が突出していて付きそうなものはあまりなく,このレンズ以外でうまく付く組み合わせはなかなかないかもしれません.

日浦 2016/02/28(Sun) 13:52 No.172
Re: フォクトレンダー アヴス
元のスコパー 10.5cm F4.5 の開放の画質です.2段絞ってF9とした時に比べると,明るい部分が少しにじみますが,橋のほうまで悪くない感じです.

日浦 2016/02/28(Sun) 18:45 No.173
Re: フォクトレンダー アヴス
コンバーチブル・ジンマー 105mm F5.6 の F11 での撮影例です.ウルトラシャープです.

日浦 2016/02/28(Sun) 18:47 No.174
Re: フォクトレンダー アヴス
Bergheilは有名ですがAvusもここまで実用可能なのですね。
このあたりのフォールディングプレートカメラのスペース効率は驚異的で、レンズ交換が可能であればピントグラスの有利さでどんな焦点距離でも対応出来て最高でしょう。
このジンマーは00ですか!そんなのがあるんだ。性能は最高ですしアオリにも余裕で対応出来るでしょう。
広角系で入手しやすいのはAngulon65/6.8でしょうね。
リンホフ用00ならかなり薄型のがありますが、収納可能かどうかはわかりません。
DagorタイプでVoigdlanderに拘るならば、75mmクラスのColinear辺りがあればよいでしょうが単体では珍品かも。
渉猟するのも楽しみでしょう。

四半スコパーの描写は、尖鋭度は程々ながらよく整っていて、4.5テッサータイプに共通する印象です。好みのかたもおおいのではないでしょうか。
それに較べてジンマーは恐ろしいほどの切れです。これはこれで個性というべきでしょう。蛇腹の伸びも充分でしょうから前玉外しでもいけるはず。

以前#0の初代ジンマー100/5.6を所持していましたが前玉外しはほとんど試さず手放してしまいました。
手元の150、180を後玉だけでテストしてみると、確かに相当ソフトになり、f32まで絞り込まないとシャープネスは望めないと判断しましたが、欠点ではなくソフト効果と見れば、納得出来ました。
ダブルアナスチグマートでの性能を第一義にしたジンマーに対し、ダゴールは前後群単体でもある程度収差を補正していると聞き及び、後玉だけにしてみたら、やはりf32〜45でなければ尖鋭とは言えません。DagorタイプはAngulonを除いてダブルで使う通常構成でも開放ではソフトなので、当時の性能はそういうものかと。AngulonはDagor特にGolden dotと較べて人気がありませんが、165mmを使ってみて開放から尖鋭なのに吃驚しました。
れんずまにあ 2016/02/29(Mon) 00:54 No.175
Re: フォクトレンダー アヴス
れんずまにあさん,実は私も最初,ebay で 105mm レンズを漁っている時に見つけた時は0番かなあと思っていたのですが,そこはかとなく違和感を感じ,よく見ると00番でした. "symmar 105mm technika" などとして画像検索すると,69のスーパーテヒニカに装着された写真がいくつか出てきますが,それらを見てもちょっと違和感のある小ささです.シュナイダーのHPには100mmはあるのですが105mmはなく,リンホフのためだけに作ったものかもしれません.

もともとベルクハイルを漁っていたのですが,やはり状態の良い物はなかなか高価でして,アヴスに行きましたがこれはこれでよかったのかなあと思っています.よく見るとほかの同時期のシャッターは取り付け穴が同じ約 30mm で(エンサインのカーバインなんかそうです),規格化がまだされていなかったのでしょうか?またベルクハイルのマウント(変な形の金属板)の内径もきっとこの径なのでしょうけれど,そのマウントを外した穴の径はどれぐらいなんだろう,とかいろいろ気になっていますが,考えないことにします..

仰るとおりスコパーは使った感じ,カーバインの 105mm F4.5 テッサーに似た感じで,どちらも優れたレンズと思いました.

今回は距離指標をそのまま活用しようと 105mm にしたのですが,広角も魅力的です.ベッドダウンができないので,あまり焦点距離が短いとベッド先端が映り込むかもしれませんが,65mm だと大丈夫かな,と想像します.少しライズするとまず問題ないでしょうし.前玉外しも興味があったのですが,ついうっかりしていて試写し忘れました.次回の課題といたします..蛇腹は20cm 以上まで伸びるので,遠景ではまったく問題ないですが,ポートレートはきついかなと思います.伸ばしすぎて蛇腹が破れても困りますし...

まだもう少し説明を追加するかも,ですが,サイトのほうにもほかの作例を含めて載せました.
http://nikomat.org/priv/camera/avus/index.html
日浦 2016/02/29(Mon) 01:23 Home No.176
処理 記事No 暗証キー

- JoyfulNote -