ウエルタウエルチニ後期型

戦前のウエルタが作った、135スプリングカメラ。
奈良市内に新しくできたハードオフで見つけた。
34年、ドイツコダックがレチナを作った。翌35年ウエルタ社は、ウエルチを作る。此れはレチナ同様、単独ファインダー。36年これを1眼RFにした、ウエルチニを作る。レチナが1眼RFに成るのは戦後。ウエルタ社は、セミ判のウエルトアで1眼RFを既に採用していた。ウエルタ社の方が革新的。
38年ウエルチニは後期型へ。軍艦部が流線形に成る。後期型は41年迄製造。
ウエルタ社は、バルダ社と共に、戦前、スプリングカメラの老舗。
ドレスデンに本社が有ったバルダ社。空襲で下請け工場が壊滅。
ウエルタ社は本社がドレスデン郊外のフライタール。工場壊滅は免れたが、ソビエト統治下で、東ドイツへ。戦後は、ウエルチ、ウエルチニ前期型を再生産。後期型は生産されなかった。
38年、戦前のドイツが充実していた頃。仕上げ装備共、同時期のツアイスイコンタ同様素晴らしい出来である。
500sコンパーラビット。レンズはF2,8クセナー(資料によるとノンコート5枚玉)F2クセノン、そして少数だがF2,8テッサー、更に希少なF3,5エルマー。
私の個体はエルマー付きである。巻き止め装置が付いている(正面底部の右のボタンで解除)が、ツアイスコンテッサ同様、フイルムのパーホレーションでギアを動かす。セルフコッキングでないので、チャージしてないと、1枚無駄に成る。巻取りは、軍艦部背面左の巻き戻しレバー。巻き上げノブ、巻き戻しノブ共底面。ファインダー接眼部は右。左にはフイルムカウンター解除ノブが在る。機械好きで、構造を理解してないと、空シャッターも切れない。スプリングは強い。開く時は手を添える必要がある。畳むとき、無限にしなくても畳める。
多分不良品?と思われたのだろう。ジャンクで5400円だった。
1眼RF、0,4倍ほど。分離は良いが、見えが良くない。
畳むと、レチナUa程。軍艦部が少しかさばる。重さは650g程、レチナより100g程重い。
まだ整備中なので試写してません。スプリングの常で、レンズのカビ、傷は有りません。蛇腹の光漏れまなさそうです。

ナースマン 2018/04/15(Sun) 19:25 No.1208
Re: ウエルタウエルチニ後期型
Elmarつき!!凄い貴重品です。
東側に撮り残されなければ、戦後1雄として名を馳せたことでしょう。
戦前の蛇腹は丈夫ですから、きっと大丈夫ですね。
レストア(必要なら)が楽しみ。
戦前のf2.8クセナーに5枚玉があるというのはCCNで読んだことがあります。写りは4枚玉と違いがあるのか大変興味深いです。
ただノンコートだったらコントラストが4枚玉より落ちるかもしれませんね.
れんずまにあ 2018/04/16(Mon) 22:13 No.1209
Re: ウエルタウエルチニ後期型
ウエルチの系譜。
私のウエルチニ、ファインダーが劣化(プリズムにカビ?)
軍艦部を外そうとしたが。距離計窓が固着して、開けない。接眼部は外れたので、綿棒とエアーで、出来る範囲掃除した。ほぼ試写可能となった。
天候不順なので、ウエルチの系譜をNt検索してみた。
ウエルタ社。戦後東ドイツと成り、ペンタコンの公社に編入して、消滅した。その為、資料が出てこない。加えて、本体側に製造Noが無い。
テッサー、クセナー、クセノンのレンズ。コンパーの製造Noから類推するほかない(エルマーは基本的にライカ用。他への転用記録が確認できない)
35年。ウエルチの最初期型。本体の角が、レチナ、イコンタと同様角ばっている。レンズ側シャッター。
36年。ウエルチニが出た時点で、廉価版のウエルチっクス(レ千ネッテに当たる)板金ボデー、角は角型。ウエルチ、ウエルチニは、レンズが4枚玉、全群移動だが、ウエルチっクスは3枚玉、前玉移動(F3,5カーサー、トリオプラン等)
37年?。ウエルチ、ウエルチニ。シャッターレリーズが本体側に。
本体の角が、バルダックス様の丸形に(ウエルチ後期型)
ウエルチニ。RF化に伴い、F2クセノンレンズが。
38年。ウエルチニ後期型。軍艦部が流線形に。
ここからは大まか。ウエルチニの後期型は、41年迄製造された。
ウエルチっクス、ウエルチの生産終了年は不明。
ウエルチT。戦後東ドイツ製。戦前の後期型ウエルチの再生産品。
レンズは基本テッサーイエナ。シャッターも東ドイツ製(200s)3枚玉のトリオプラン付きも有った様子。後期製品にはコート付(T)テッサーも。戦後直ぐは、戦前の残り部品。その後徐々に東ドイツ化し、50年頃迄生産。
51年頃。ウエルチTcファインダーが軍艦部と一体化(流線形ではない)55年頃、生産終了か?
ウエルチっクス、ウエルチニは、東ドイツ時代には生産していない。
勿論、クセノン、エルマー付きも無い。
エルマー付き。<ウエルチニ後期型にエルマー付きが有った>との記載が有った。
<this version is quite rare and demands high price in the maketplace>camera-wiki.org
私の個体はエルマー付き。整備してみると、改造品とは思えない。確かに存在していた証拠である。
エルマー、コンパー付となると、珍品のライカBと同じ。
他にもエルマーの付いたカメラが有ったのだろうか?
ライツ社に、レンズ本体として、エルマーを出荷した記録が不明。
勿論、ウエルタ社にも、エルマー付きウエルチニの記録は不明。
F3,5なら、原理的にはウエルチに装備も可能。此方は存在したのだろうか?現実的に、一体何台ほど残っているのだろう?
ナースマン 2018/04/17(Tue) 17:33 No.1212
Re: ウエルタウエルチニ後期型
すばらしいレポートをありがとうございます。
この機種について全く知りませんでしたので、大変勉強になりました。
出会ったら、脂汗流しそうな機種になりました。

他社ボディに供給されたエルマーは、1931-35のナーゲルピュピレに5cmf3.5があります。
他にナーゲルボレンダの6x9蛇腹に10.5cmエルマーがあったはず。

しかしナーゲル以外にも供給されたというのは私は初めて知りました。
れんずまにあ 2018/04/18(Wed) 21:25 No.1213
Re: ウエルタウエルチニ後期型
そうだ,ナーゲルがあった。
昔<レチナ同盟>で、レチナ誕生をレポート。ナーゲル博士挙げていた。
改めて調べると、35年頃ライツ社は、エルマーを各社に提供していた様子。初期のライカはフラジンが個体合わせ。31年のC型途中からレンズ交換可能となる。
32年のU型から、距離計が付き、レンズ交換が容易になる。これ以降、ライツ社はライカ用交換レンズの生産に追われるようなった様子。其れまでは、レンズ生産に余裕があった?
127では、メントールドラフィアもあった。
これ等がすべて、エルマーの生産台数に含まれている。
ウエルチニへの供給数は益々不明。
ウエルタ社。戦前はツアイス、ホクトレンダーに並ぶ老舗。
スプリングカメラでも、バルダ社より上級品。
1眼RFのオートセミミノルタは、ほぼウエルツルのコピー。
135でも、レチナを参考に、少し上級品を目指していた。
ダイキャスト本体、1眼RF、コンパーラビット、テッサーレンズ。
レチナがエクター付を出したので、対抗してエルマー付きを出した?
因みにF2ノンコートクセノン。これも、五群6枚玉の様子。
戦後、東ドイツに編入して、開発が止まった。
ウエルタとしては、56年頃迄ですが、ウエルチTcはその後も販売(売れ残り)していたようです。
画像は、昭和11年、アサヒカメラ冬の増刊号。ウエルタの広告です。ウエルチが販売された頃。ウエルチニは未だ販売されていません。基本セミ判が中心です。

ナースマン 2018/04/18(Wed) 22:46 No.1214
Re: ウエルタウエルチニ後期型
試写。天気が良いので、春日大社へ試写に出向いた。
フジはまだ少し早かった。外国人が一杯だった。
比較の為、ツアイスコンテッサ持ち出した。
45mmF2,8 、Tコート、オプトンテッサー付。数年前に長野様の所でOH済。此方を標準にした。
露光はコンテッサの露出計が死んでいる。L158に合わせた。
コート付のテッサーとノンコートのエルマー。明るい所ではコントラストに差がある。加えて、45mmと50mm。画角にも差が有る。
どちらも現代のカラーに対応してないが、問題ない。
普通に、テッサーと戦前のエルマーの画像。
使い勝手は明らかに差が。コンテッサが右利き用にできているのに対して、ウエルチニは左利き用?
背面右にファインダー。ホーカシングも右手。シャッターは左。其れも少し斜め押し。コンテッサとは、手が全く逆使いになる。
右利きの私。明らかにコンテッサの方が使いやすい。
ASA100、フジ記録フイルム。250sF8
どちらも右がテッサー、左がエルマー。

ナースマン 2018/04/19(Thu) 16:56 No.1215
Re: エルマーの写り
整備中のカットでものは言えませんが、コンテッサのほうがフレアが少なくシャープに見えます。
まあ135用テッサーの中でもコンテッサの尖鋭度は最右翼ですから多少割り引いても、エルマーは合焦していないように見えます。
前オーナーが分解して変な再組立をしていないかぎり、距離計かフランジの狂いがあるのかも。
私は戦前の135スプリングやエルマーは経験がないので、コントラストについて比較ができません。
ノンコート120機の経験からは、こんなものかなと思いましたが、戦後なのにノンコートXenar45/2.8のイコンタ35はかなりシャープでしたので、多少問題があるのかもしれません。
れんずまにあ 2018/05/04(Fri) 09:30 No.1219
Re: ウエルタウエルチニ後期型
ウエルチニ整備。確かにおかしい。
画像を確認すると、光漏れ、手振れがある。
スプリングが強い。久しぶりで撮影したので、レンズボード、又は本体側の接着部に光漏れがありそう?
ファインダーにカビ。見えが良くない。
ピントも?これでは、完全分解する必要が。一部分解できない。
加えてピントを出すには、測定器具も必要。私の手に負えない。
ま、珍品なので、師匠の長野氏に相談してみる。
場合によっては完全なOHが必要かも?取り合えず、何とかしよう。
ナースマン 2018/05/04(Fri) 20:40 No.1229
Re: ウエルタウエルチニ後期型
ウエルチニ整備2。JR下灘駅に、イベント列車、伊予灘号の撮り鉄に行っていた。
整備が遅れている。試写でピントが?光漏れ。ファインダーのカビ。
長野カメラワークに相談。ピント面が0,1mm程ずれている。
やはりこの個体、以前の持ち主が、弄っていた様子。ばらして組み上げるときに、ワッシャー1枚組忘れた可能性が?
光漏れ。どうやら裏蓋からの様子。基本、現役当時から、裏蓋にモルトが無い(当時ASA30程度のフイルムを使い、基本ケースに入れて使用していた)
私の個体、ケースが無い。ASA100フイルムを使うため、モルトを組み込むことに。
ファインダー。ウエルチニはプリズムを使っている。反射鏡の方がカビは取りやすいとの事(プリズムはカビが食い込んでいる可能性が)
シャッターは問題なさそう。ブレは左なので、手振れの様子。
と言うことで、ピントの問題も有り、長野氏に委ねることに。
長野氏によると、スプリングカメラの整備は、やはり蛇腹が問題。
蛇腹用の良質な革が、ほとんど確保できず、高いとの事。
交換となると、原料代だけで2万程。OHとなると、4万程掛かる。
長野氏も、エルマー付きのウエルチニは初めてとの事。
取り合えず、1,5万で引き受けてもらった。図らずも、135スプリング。レチナUa、コンテッサと共に、長野氏に整備願った事に。
最後まで使うスプリングカメラ。この3台に成りそう。
ナースマン 2018/05/10(Thu) 18:18 No.1230
Re: ウエルタウエルチニ後期型
OH上り。長野カメラワークでのOH上がった。
ピント。ワッシャー枚分のずれ。やはり弄っていた。ワッシャー追加。
RF。距離計にずれはないが、ハーフミラーの腐食。掃除のみ。
シャッター。シャッター整備と共にシャッターレリーズ調整。軽くなったが、基本左利き用。慣れが必要。
光漏れ。此れが問題。明らかな原因が不明。取り合えず、裏蓋にモルト張り込み。蛇腹に穴は無いが、もしかしたら、1度張り替えているかも?との事(長野様も、ウエルチニ扱うのは初めて。本来の状態が不明)中々の曲者である。
晴れたら、試写して、画像上げます。問題なければ、大正解。
OH代の方が掛かったが、ほぼサービスでやって下さった。
本体価格合わせて2万程なら、掘り出し物。
追伸)取り合えず、試写が上がった。光漏れの確認。当時では、考えられないASA400フイルム使って、ピーカン撮影。依然光漏れ。
再度お蔵入りか?左画像。250s、F11。
右の画像は、同時期のレチナ148。F3,5、アナスチグマットエクターです。フイルム、露光も違うので、あまり比較に成りませんが。

ナースマン 2018/05/23(Wed) 14:29 No.1251
Re: ウエルタウエルチニ後期型
再生。やっと蘇った。蛇腹の本体側、1谷目に微かな擦れ。そこからの光漏れであった。
本体側で蛇腹を外し、遮光塗装、再度接着。私には到底できる範囲でない。
ピント出し、シャッター調整、ファインダー、レンズ清掃、裏蓋のモルト張り込みを含め、15000円では、気の毒なほどの作業でした。
<如何なる堅艦快艇も、人の力に寄りてこそ、その精鋭を保ちつつ〜>正にそんな感じです。

ナースマン 2018/06/16(Sat) 11:35 No.1260
Re: ウエルタウエルチニ後期型
画像が小さいので詳細はわかりませんが、以前ご投稿された画像とは見違えるような、シャープなプリントになりましたね。
まずはお祝い申し上げると共に、貴重なカメラを蘇えらせ後世に受け継がれるようにしてくださったクラフトマンに賞賛を。
れんずまにあ 2018/06/16(Sat) 22:25 No.1261
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