近距離撮影用単独距離計セット
レンジファインダーカメラが主流の時代、カメラ単体では最短撮影距離は1m、せいぜい70pまでに限られており、手軽に近距離撮影を行うことはできなかった。
本格的には焦点版とカメラをスライドさせて入れ替える装置や、レフボックスが使われたが、頑丈なスタンドに固定する必要があり、旅先やお茶の間のスナップに使うわけにはいかない。
そこで、レンジファインダーカメラで手軽に近距離撮影するために、別スレッドにある「オートアップ」類か、それに準じた、カメラ本体の距離計を利用するデバイス、またはワイヤーやプレートによる距離固定された撮影枠を用いるもの、そして、これから述べる、近接専用の単独距離計をクリップオンするものなど、様々なアイディア製品があった。
一眼レフ、さらにはミラーレスデジタルカメラの時代には全く無用の代物だが、先人の創意工夫が偲ばれて使って楽しいアクセサリーだ。
オートアップは間宮誠一郎のアイディアでプレザント社が多機種に対応する製品を展開したが、同様の製品「プロキシメーター」はフォクトレンダー、アグファが純正品を出し、またツァイスは「コンタテスト」を供給、ニコン、キヤノンRFも純正で出ている。
ライツはオートアップ同様に本体ファインダーを利用し距離計前におく偏角プリズムを中間リングと組み合わせた「NOOKY, SOOKY, ADVOO」などに加え、中間リングとセットの固定ロッドに撮影枠を付けた製品を供給した。
他方、ツァイスイコンと、ドイツコダックは、プロクサーレンズに近接専用の単独距離計を組み合わせた製品を出しており、各社各様の方式が興味深い。
時は離れて80-90年代、中判の距離計連動カメラが復活し、一部の機種は近接撮影装置をラインアップさせた。
フジカGS645初代は、クローズアップレンズに、焦点版を持つ上下左右逆像の近接ファインダーを組み合わせた、たぶん空前絶後のセットを出した。もちろん実用性は高くない。
ニューマミヤ6はオートアップのリバイバル、マミヤ7は打って変わって固定ロッドの先に撮影枠をつけた、かつてのライツやニコノスと同じ方式を採用したが、それが接写装置の最後になった。おそらく新たに登場することはないだろう。
写真は、戦後ツァイスイコン コンタックスIIa、IIIa用 コンタメーター439 Sonnar 50mm,Proxer 50cm
戦後型のツァイスイコン製近接距離計。439はコンタックスIIa、IIIa用。
外観はオールクローム、採光式ブライトフレームを備えている。ダイヤル切り替えによってパララックス補正と距離合致を行う点はレチナと同様。3種類の距離に対応したプロクサーレンズを併用する。標準セットではφ40.5mmスレッドだが、ステレオター専用はスレッドが省略された円筒になっている。
プロクサー(クローズアップレンズ)ではなく、コンタプロクスというヘリコイドで接写するシステムにも対応している。
コンタプロクス1および戦前コンタプロクスはコンタメーター439に対応していないのでここでは触れない。
コンタプロクス2は、Tessar50mmf3.5が固定装着してある、外バヨネット三脚座つきヘリコイドで、かなり長大なストロークを持っていて、その目盛りの途中にコンタメーターの設定距離、50,30,20pが含まれている。本体の距離計には連動しないが、距離目測で無限遠から使える。コンタプロクス2のTessarは東独Jena、西独TつきOpton、TなしCarlZeissがある。手元のTなしは無限遠から性能はよいが、近接設計とは言えないように感じる。(テッサーは近接でもあまり性能が落ちないとどこかで読んだ気がするが、どうなのだろう)
プロクサーによる変倍ではコンタメーターのブライトフレームの中で一番外側を使う。変倍しても視野枠は変わらない。一方コンタプロクス2は繰り出しによって画角が狭まるため順に内側の小さな視野枠を使う。50pはプロクサーと同じ外、30pはその1つ内側、20pは一番中心の枠で実質倍率が高くなる。
コンタプロクス2とコンタメーターの組み合わせは当時としては出色の使いやすさだったろう。ただし同時代にコンタックスSやエクサクタが存在しているので、本格的な接写には劣ると思われるだろう。しかし当時のSLRは普通絞りかプリセットで不便、またスクリーンは暗く焦点は曖昧だ。コンタメーターは絞りに関わらず明快な視野と正確な距離計により快適であり、十分当時のSLRを超える利点があったと思う。
439とほぼ同じ構造だがTessar45mm用に適合している。
プロクサー50,30,20は、439の40.5mmから28.5mm径になった。
本体側は無限遠に固定して使う。
精度は非常に良い。
これはフランス製のMAJOR −2−という距離計、無限から0.2mまで連続的に測距できます。
基線長が短く、近距離重視であることが予想されます。
距離目測カメラのキヤノンデミEE17には、36cmに寄れるクローズアップレンズが用意されています。
この距離計は大変コンパクトなので、ハーフサイズカメラにも違和感なく搭載できます。
この組み合わせの問題は、視野決定が困難であること。
ここまで寄るとパララックスが大きく、正確なフレーミングは諦めて、おおまかに勘で合わせるしかありません。
距離が合うだけでも使い道があると思います。
これより古いオールクロームの製品もある。NI/32, NII/32というφ29.5mmクローズアップレンズ2種類と、I, IIを重ねたときの3つの状態に対応した上面ダイヤル表示に従って、本体距離目盛を設定する。または先に本体側の距離設定を行って、近接距離計のダイヤルを合わせてもよい。ダイヤル回転に応じてアクセサリーフットの俯角が変化し、パララックスが補正される。後は距離計が合致したところで撮影する。
Retina IIIc、Xenon 50mmf2, NII
ただし、距離計ダイヤルは軽く動きやすく、知らないうちに設定が変わっても気付かずに撮影続行する危険性があり常に注意せねばならない。また、距離計ファインダーで設定する視野決定はどうしても正確ではなく、大まかに撮影してトリミングで整えることになりがちで、コンタメーターのような距離固定が決定的に劣っているとは言い切れない。
以下撮影距離は、メジャーによる大まかな測定。またm表示モデルなのでftモデルでは多少異なるかもしれない。
I:ダイヤル∞ー1(m)、フィルム面から92-54cm
II:ダイヤル∞ー1.5(m)、フィルム面から50-37cm
I+II: ダイヤル∞ー0.9(m)、フィルム面から36-28cm
これを見ると、だいたいNIは一般的なNo1(1m)、NIIはNo2(0.5m)、NI+NIIはNo3(0.33m)に相当しているが、厳密にはズレがあるようだ。
IIIC用Culter-Xenon C35/5.6、IIIS用Tele-Arton85/4もフィルタースレッド29.5mmなので装着は可能。合焦するかどうかは皆様自己責任で...
これを言っては身もふたもないが、このプロクサーNI, NIIはRetina Reflexで使うほうが、よっぽど正確で使いやすい。
レチナレフには専用クローズアップレンズR1, RII, RIIIが供給されているがI, IIについてはNと同じ物ではないか?
(先のコンタメーターの所で触れたSLRとの比較と意見が反対ですが、それは先に比較したContax S, Exakta Valexら原始的SLRと較べ、Retina Reflexは自動絞りが先進的であり、ここまでくると接写におけるSLRの有利が明らかになってくると思います)
Retina IIIS, Retina-Xenar 50mmf2.8, NI
有名所としてはミノックスチェーンがありますね。同じように携帯用チェーンを利用するヤシカアトロンもあります。
これはツァイスイコンの大衆用ライン、コンティナなどに対応した近接ファインダーとチェーンのセット。
チェーン先端には黒いプラスチック小球(50cm)、途中に赤い小球(30cm)があり、ファインダー基部の黒赤切替で俯角を設定します。。
対応したクローズアップレンズは、コンタフレックスと共通のφ28.5mmカブセを使います。
私のは赤玉が外れちゃってます。多分レンズからアクセサリーシューまでの距離が同程度のカメラなら汎用に使えるのではないかと思います。
Contina IIa、Pantar45/2.8, Close up chain