120/220兼用機

120,220フィルムとは
 コダックコード#120フィルムは61.5mm幅、裏紙付き6x9p(56x84mm、機種によって差がある)8枚撮り規格として1901年に登場し、世界のデファクトスタンダードとなった。コダックはほかに多種多様な規格の裏紙つき無孔ロールフィルムを販売したが、120だけが100年を超えて生き残った。1972年コダックは120と同じ幅で2倍の長さの220を発売、フジフィルムやコニカも一部追随した。裏紙がないため赤窓式では使えないが、平面性が良好で撮影可能枚数が2倍になるため、近代的中判カメラのほとんどが対応した。

220を使うためにはフィルムカウンターと、裏紙有無の厚みの差を解決せねばならない。

れんずまにあ 2019/09/30(Mon) 23:58 No.1600
Re: 120/220兼用機
なぜ圧板を切り替えるのか

 220は裏紙の厚み分120よりフィルム面が後退する。その分だけ圧板の厚みを増す必要がある。
 付記するがブローニーカメラの焦点面は、フィルムゲートのフランジ面で規定されず複雑に凹凸している。
 例えば旧来のアパーチャーゲートと圧板でフィルムを挟む「圧着式」ではフィルム中央部は前方に突出し、その度合いは裏紙の材質、湿度、巻き上げから撮影までの時間、そしてフォールディングカメラでは蛇腹伸張に伴う「吸い出し」によって変動するため、特に焦点深度が浅い大口径レンズでは深刻な問題になる。
 近代的カメラでは圧板とフィルムゲートの間にクリアランスを設け、フィルムは隙間を通行する「トンネル式」が採用され劇的にフォルム面浮動は改善した。
 トンネル式では圧版位置がフィルム面を規定するため、兼用機では220使用時に圧板位置を変更する機種が多い。
れんずまにあ 2019/10/01(Tue) 00:00 No.1601
Re: 120/220兼用機
裏紙厚程度無視できないか。

 結論を言うと、装備するレンズの開放f値(使用f値でもよい)と、どの程度のプリント拡大率を見込むかで答えが変わる。f4、厳しく見積もってf5.6より絞るなら圧板位置を切り替える必要は少ない。
 またサービスサイズからキャビネ程度の拡大率では肉眼で差を認識できない。
 ただし中判ユーザーで大伸ばしを考慮しない人は少数派だろうし、機材側もf2.8以上の口径が珍しくないため、圧板切り替えはあったほうがよい。F2.8で圧板切り替えを忘れると「明らかに」焦点外れを認識できる。

 例えばハッセルブラッドM12マガジンは、元来120専用で圧板は変更されない。一応220フィルムを使用するキットが販売されたが、f2.8開放で無限遠が5-10m程度の前ピンになる。そこで圧板に120裏紙を取り付けると無限遠に合う。同様にSL66マガジンも120裏紙の効果を確認した。
れんずまにあ 2019/10/01(Tue) 00:02 No.1602
Re: 120/220兼用機
圧板位置が固定された機種はダメなのか。

 固定圧板機には、220を考慮しないで製作されたが後で使用できるようになったものと、220を前提に設計されたものがある。
 前者はハッセルM12で、明らかに焦点面がずれる。
 後者は120と220の中間に圧板が調整され、どちらも焦点深度の誤差内に入るようにしているらしい。

 さらに、前述したように、120/220焦点面はf4-5.6に絞れば深度に入ってしまうので、実用的には圧板固定機でも問題になることは少ないと思う。
 それでも製作誤差はあり得るし、購入後テスト撮影で開放の焦点精度を確認すべきだ。
 私のSL66は120に合致し、220では外れたためそれを考慮して使用している。
 f2クラスの超大口径の開放は、誤差では済まされないため、テストはさらに厳密を要するだろう。
れんずまにあ 2019/10/01(Tue) 00:04 No.1603
Re: 120/220兼用機
このレポートに意味があるのか。

 極めて残念なことに、220フィルムは2016年に生産終了し、今後は業者と個人ストックだけが存在する。
 積極的220ユーザーであっただけに寂しいが、入手容易とは言えないため新ユーザーにとってこのレポートは実用的でない。
 例外的にローライキンのユーザーは裏紙なし135フィルムを使うため圧板を135・220位置に切り替える必要があり、このレポートが役立つ?かもしれない。

 と思ったら、eBayに中華製220モノクロフィルムが出品されているらしい。どこまで継続性があるか、実用性はどうか全く不明だが、一応現実に選択肢はあるわけだ。

 220機材は、220ディスコンに伴って評価額が極めて低く、かつての高額高級付属品が投げ売り状態である。専用マガジンがタダにはならないのが腐ってもタイだが、一時高値を付けたローライ12/24切り替え機も120専用機と価格は変わらなくなった。220は性能的なメリットもあるので楽しんでみるのも一興かと思う。

 220現像には、パターソンリールはそのまま対応、ナイコールタイプは専用リール(120より巻きがつまった)が必要。カウンターが対応する専用機材は必要だが、ハッセルM12のように無理をすれば、120専用機でもなんとかなる、かも。

次から各論に入る。
れんずまにあ 2019/10/01(Tue) 00:06 No.1604
120/220切替機の形式
120/220切替には、圧板とカウンター変更にさまざまな形式があった。
それをまとめて分類してみる。

 圧板(Pressure plate)の形式

PF:圧板固定(Fixed)120/220で圧板切替しないもの
PS:圧板スライド(Slide)圧板を平行移動するもの
PI:圧板裏表差し替え(Inside out)圧板を一旦外して裏表交換するもの
PR:圧板回転(Rotate)圧板を外さずに回転させるもの(一部外して縦横変換するものがある)
PA:圧板自動(Automatic)カウンター切替またはバーコード読み取りにより自動的に圧板位置が変換されるもの

 カウンター(Film counter)の形式

Cm:カウンター手動(manual)カウンターを手動で切り替えるもの
Cd:カウンター連動(demand)圧板変更に伴いカウンターが切り替わるもの。
Ca:カウンター自動(automatic)バーコードによる完全自動切り替え
Cr:カウンターリセット(reset)120用カウンターをリセットしてもう一度使うもの

画像:ペンタックス67 スライド式切り替え:PS

れんずまにあ 2019/10/01(Tue) 00:11 No.1605
645機
 645
GX645AF, Hasselblad H:PA-Ca(Bar-code)PA-Cm(バーコードなし)
Bronica RF645:PS-Cd
Fuji GS645:PS-Cm
Fuji GA645:PS-Cd
Fuji GA645i:PS-Ca(Bar-code、圧版と異なる場合警告)PS-Cd(バーコードなし)
Fuji GA645Zi:PA-Ca(Bar-code)PA-Cm(バーコードなし)

一眼レフ
 120/220兼用、切替可能なのはフジフィルムGX645AFと兄弟機のハッセルブラッドHシリーズのみ(バーコードまたはスイッチによる自動切り替え)で、このとき圧版位置も自動変更されるが触ったことがないので詳細不明。
 他の645機(ブロニカETS、マミヤM645、コンタックス645、ペンタックス645)はすべて120,220別の専用マガジン、あるいは専用着脱式中枠(フィルムホルダー)を交換する。
 キエフ645は現物を見たことはあるが内部は不明。
 ブロニカS2、EC用645マガジンは120専用のみ。
 マミヤRB67用645マガジンも、120のみ。RB67プロSD用は120と220は別。
 フジGX680用645マガジン:120と220は別

RF
 ブロニカRF645は背部に120/220表示窓があり、カウンター切替装置がない。圧版切替に連動しカウンターが切り替わる。
 フジフィルムGS645系は圧版をプッシュしてスライドし、120/220表示位置に嵌め込む。カウンターは背部に切替スライドを別個に操作する。
 フジフィルムGA系は圧版位置をGS系同様の圧版スライド変更すると、圧版位置を検知し自動的にカウンターが切り替わる。
 GA645i、GA645Wi(i系)はバーコード入りフィルムはフィルム感度自動セットに加えて120/220カウンターが自動的に切り替わる。圧版は手動スライド切替。バーコードと圧版が相違した場合液晶120/220表示が点滅して警告するとともに、フィルムカウンターはバーコード情報が優先される。(日浦様のご指摘)
 GA645Ziは、バーコード情報を読み取りボディ側から圧板位置が自動的に調整され、完全自動になった。バーコードがないフィルムは、裏蓋の圧板横スイッチを押して120/220表示を切り替える。圧板位置とカウンターは自動調整。

画像:GS645:PS

れんずまにあ 2019/10/01(Tue) 00:15 No.1606
66一眼レフ
66は機種が多いため一眼レフとその他に分けます。

 66一眼レフ
Bronica S2, C2:PF-Cm
Bronica EC, ECTL, ECTL2:PF-Cm
Rolleiflex SL66、SL66E:PF-Cm
Rolleiflex SLX:PF-Cm
Kowa SIX, MM, Super66:PI-Cm
Pentacon Six, Exakta66、Kiev6C:PI-Cm
Ritreck 66, Norita66:PI-Cm
Hasselbrad M12 mag:PF-Cr

 ブロニカS2, C2、中枠は圧板位置の調整はなく、スタートマークも120/220の区別はない。マガジンのカウンターを12/24切替する。
 同EC, ECTL, ECTL2共用中枠、圧版位置調整なし、カウンター切替のみ。
 ローライフレックスSL66(初代)ブロニカS2, ECと同様、圧板位置調整なし、マガジンのカウンター切替のみ。SL66Eも同様。その後SL66SE, Xは120、220専用マガジンになった。
 ローライフレックスSLX フィルムバック背面のカウンター切替のみ。圧板位置調整なし。6006以後は120、220専用マガジン、6002は120、220専用バックになった。
 コーワシックス、シックスMM、コーワスーパー66:圧板裏表差し替え、カウンター切替。
 ペンタコンシックス、エクサクタ66:圧版差し替えで切替。プラクティシックス時代は120専用。
 キエフ6C:初期は圧板切替なし、カウンター手動切替のみ。後期はペンタコンシックス同様圧板差し替え。
    60:120/220対応とされる記述もありますが、120専用との記載もあります。
 リトレック66、ノリタ66:圧板裏表差し替え、カウンターダイヤル手動切替。
 ハッセルブラッドM12マガジン:圧版位置調整なし。後窓を見ながら巻き上げ、フィルム頭が出たら後部確認窓をLight tight plugで遮光し、少し巻き上げてカウンター1を出す。12枚撮影後カウンターリセットしてもう12枚撮る。13-24まではコマ間隔が広がっていくがなんとか最後まで収まる。

画像:コーワシックスMM:PI 取り外して裏表差し替える。Super66の交換マガジンでも同じ操作。

れんずまにあ 2019/10/01(Tue) 00:19 No.1607
66TLR
66二眼レフ

Yashica Mat 124, 124G:PS-Cd
Minolta Autocord III, CdS:PR-Cm
Rolleiflex 2.8E, F, 3.5F:PS-Cr
Mamiya C220:PR-Cm
Mamiya C330:PR-Cd

ヤシカマット124、124G:圧版スライド切替に連動してクランク横の12/24枚数インジケータが切り替わり、カウンターも連動する。
ミノルタオートコードIII, CdS:圧版とりはずし90度回転装着、カウンター手動切替。
ローライフレックス2.8D, E, F:12/24モデルは兼用機。またキットで兼用機にグレードアップできた。圧版スライド切替。カウンターは最初ノブを24にセットし1-12まで撮影後、12に切り替えると1にリセットされさらに12まで撮影する。
マミヤC220, C330:圧版回転切替。C220はカウンター手動切替、C330は圧版を切り替えるとカウンターが連動する。

画像:ローライフレックス2.8E、スライド式 PS 左にずらすと6x6表示がでる。つまりこの時点では220は未発売で、ローライキンと120の切替であり、220キットを後付けしたと考えられる。

れんずまにあ 2019/10/01(Tue) 00:24 No.1608
66RF
RF
New Mamiya 6:PR-Cd
ニューマミヤシックス:圧版90度回転切替。カウンター連動。

れんずまにあ 2019/10/01(Tue) 00:26 No.1609
67機
 67
Pentax 6x7, 67:PS-Cm
Pentax 67II:PS-Cd
Mamiya RB67 6x8電動バック:PR-Cm

Fujica GM67, GW, GSW67、680:PI-Cm
Fujifilm GF670, 670W:PS-Cd
Makina670:PI-Cm
Mamiya 7:PR-Cd
Mamiya Press Rollholder2型、3型:PI-Cm
Linhof 220:PS-Cm(PS-Cd?)

一眼レフ
ペンタックス6x7、67、67II:圧版スライド切替。6x7と67はカウンター手動切替、67IIは圧版に連動してカウンター切替。
マミヤRB67系:6x8電動ホルダーのみが圧版回転切替。カウンター手動切替。

二眼カメラでは切替式はなし。
RF
フジカGW, GSW670, 680:圧版裏表切替、カウンター手動切替。(120半裁:6枚撮りの設定もある。ライトパンSS対応)
フジGF670,670W:圧版スライド式,カウンター連動。
プラウベルマキナ670:圧版裏表差し替え、カウンター手動切替。マキナシリーズでは670のみ220使用可能。
マミヤ7:圧版180度回転切替。カウンター連動。
マミヤプレスロールホルダー2型、3型:圧版裏表差し替え、カウンター手動切替。
リンホフ220:圧版スライド式、カウンター手動切替?

画像:マミヤ7:圧板回転式:PR

れんずまにあ 2019/10/01(Tue) 00:28 No.1610
69機,69以上
 69
Fujica G69, GW, GSW69:PI-Cm
Mamiya Press Rollholder2型、3型、Plaubel Pro-shift:PI-Cm
Wista Roll holder:PF-Cm

フジカG69、GW, GSW690 圧版裏表差し替え式、カウンター手動切替。(120半裁:6枚撮りの設定もある。ライトパンSS対応)
マミヤプレスロールホルダー2型、3型:圧版裏表差し替え、カウンター手動切替。
 プラウベルプロシフトは3型と同形式。
ウイスタロールフィルムホルダー:圧版切替なし。カウンター手動切替。

612
リンホフテクノロレックス:圧版切替なし(だったと思う)、カウンター手動切替。
フジG617:触ったことがありません。120/220切替式、だが方式はわかりません。たぶんGW690と同じPI-Cmでしょう。(アートパノラマは赤窓なので220無理)
ワイドラックス120:触ったことがありません。ご教授お願いします。

画像:フジGS690:裏表差し替え PI

れんずまにあ 2019/10/01(Tue) 00:30 No.1611
Re: 120/220兼用機
645機 について追加させてください
mamiya 645AF,AFD,AFDII 中枠の圧板の180度回転による切り替え
mamiya 645AFDIII 中枠の圧板の180度回転による切り替え
(IIIでフィルムホルダーの変更がありました)

以前にmamiya 645pro でフィルムを使っていた際ですが、150mm程度の望遠で雨や雪等の湿度が高い場合は 絞りF5.6でも 120を使うと画面のどこかにピンぼけがあらわれることが頻発するので(中央とは限りませんし複数箇所の場合もあり)、自分の場合はピンぼけを軽減させる目的で、必ず220フィルムを増感して使っていました。M645よりPentax645のほうが平面が出ていましたが、一説には圧板手前のフィルムの折り曲げ具合の違いが原因で、M645はS字、Pentax645はC字のためと言われていましたが正しいかはわかりません。
220のポジが入手できなくなったので、デジタルバックに移行するしかありませんでした。
studio9600 2019/10/09(Wed) 03:22 No.1612
Mamiya645AF
Studio9600さま、645AF系はまったく存じませんでした。M645はインサートを交換するタイプで、マミヤ645AFとシャーシがおそらく共通のコンタックス645もインサート交換なので、マミヤ645AFも同じかと思って想像で書きました。
ご指摘を深く感謝します。

120裏紙によるフィルム面浮動の影響についても、ご経験をたいへんありがとうございます。
f5.6でも外れるほどの浮動があるわけですから深刻です。
私は220をかなりストックしていますが、いずれ終了するのも確かで、非常に参考になるお話でした。

確かにデジタルバックは平面性について懸念は払拭されますね。
逆にホコリ付着は素人ながら懸念するところです。どっちがいいかと言えば,修正でなんとかなる可能性が高いホコリのほうが与しやすいかもしれません。
れんずまにあ 2019/10/10(Thu) 17:32 No.1613
Re: 120/220兼用機
また一つ素晴らしい資料が出来ましたね。

220フィルムが無くなり、何のためのカウンターか判らない人が増えてきています。
ムック等では紹介されていても、実際に220フィルムを使用された経験がない方が大半だと思います。

 一時は220が使える事がフラッグシップ機の証の様でしたが、フィルムがなくなってしまい、その辺りが微妙になってしまいました。
efunon 2019/10/14(Mon) 17:58 No.1614
Re: 120/220兼用機
efunonさまコメント有り難うございます。
最初に述べたように大手が220撤退したため、新たに中判を始められた方にとっては有益な情報ではないのを承知でまとめました。
Studio9600さまのご経験をみても220は平面性で高いメリットがあったため、大変残念なことです。

さてカメラ・レンズ白書74年版を書庫から掘り出して眺めていると、各種中判のフィルム面精度が載っていて、120・220圧版切替なしのブロニカS2は、どちら焦点面はほぼ一致し、大変揃って被写界深度内に収まる焦点面でびっくりします。
他の圧版切替機が結構ばらつき、被写界深度から外しているのを尻目に、どういうことなのか理解に苦しむ結果です。

私はブロニカS2で220を通したことがあまりありませんので、SL66やハッセル1600Fで行った120と220の検証をやっていないのです。
今更貴重な220を、高価な現像料金を払って検証するのもどうかなあ、とネガティブな気持ちです。
まあ、この辺は謎と言うことで....(^^;;;
れんずまにあ 2019/10/19(Sat) 23:31 No.1621
モノクロ220情報
日浦様にご指摘頂きまして資料を漁っていた所、1981年発刊 土方健介「中型カメラの使い方」に記載がありました。

コダックトライXプロとプラスXプロのみに設定があります。パナトミックやローヤルXには220がありません。

当時のフジと小西六のラインにはカラー含め存在せず、コダックもネガカラーはベリカラーのみ、ポジの設定はありません。
その後他社がモノクロで追随したかはわかりません。

カラーは鮮明に覚えているのですが、1985から最近まではモノクロから遠ざかっていた時期で、中判にモノクロを通したのは2017年が初めてだったりします。

余談ですが80年代初めはまだ116,616と620,127は現役だったのですね。
れんずまにあ 2019/11/03(Sun) 14:02 No.1629
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