エンサイン レンジャー

1950年代 英国ホートン&ブッチャー社製 6x9cm判スプリングカメラ

戦後エンサイン銘の6x9cm判カメラには、高級距離計連動機オートレンジ820、その目測版セルフィックスが有名ですが、さらに下のレンジに、同じボディで3速シャッターを装備したレンジャーがありました。
戦前に同じ名称の普及機があり、戦後版はレンジャーIIとされます。
そのレンジャーには、もっともボトムラインに位置する「エンサー105mmf6.3」つきが多いのですが、私のはハイエンドの「エクスプレス105mmf3.8」です。
最高級レンズをこのような簡単なシャッターに入れてしまう所がお国柄といいましょうか。
例えばツァイスイコンはテッサーをデルバルなどには決して入れません。逆にトリオターをシンクロコンパーに入れることはやりますが。

しかし、スポーツなど特殊な高速シャッターが必要だったり、1/2-1秒など微妙な長時間露出を企図しなければこの「トライコン」B,T, 100, 50, 25シャッターでも実用上困ることはありません。
しかもレンズの性能が良ければ画質のために絞りを選ぶ必要はないわけです。

頑丈な基本ボディとレンズは高級機と共通ですが、それ以外は極力節約されています。
シャッターは前述のように3速プラス開放で、折り畳みファインダーは素通し枠。
レリーズはボディになくシャッターに短いレリーズがネジ込まれています。
このシャッターには直接レリーズできるレバーがないのです。
 (このショートレリーズは、レチナ初期にも流用できそうですね)
蛇腹を支えるタスキは直線構造で、セルフエレクティングではなく、スプリングも入っていないので正確にはスプリングカメラではありません。
巻き上げは当然赤窓で、当然二重露出防止機構などありません。
各々の材料は良く、必要以上と思えるほど頑丈で、壊れるところはなさそうです。

もし英国に行けるならば、これを持参したいですね。

れんずまにあ 2016/02/13(Sat) 01:59 No.154
Re: エンサイン レンジャー
レンジャーに大口径エクスプレスがついたカメラがあるのですね!エンサインというと,私は古いカーバインと 16-20 は持っていますが,820 は非常に高くなっていて全く手が出ません・・・しかし一説では,(3色の点が打ってあってアポクロマートだとか言われているけれども) 820 のエクスプレスは,セルフィックスなど他の 105/3.8 と同じものだということらしく,きっとそのレンジャーのレンズも同じもののように思います(もう1つ,よくある誤解として,エクスプレスは5枚玉というものもありますが..).

シャッターとして1/25〜1/100あたりの3速あれば十分というのもうなずけるところです.目測カメラで,手持ち撮影だとこれら以外の絞り値を選ぶことは事実上ありませんものね.

「スプリングカメラでいこう」という書籍にも多数のスプリングカメラが挙げられていますが,著者らは複雑で重いものより軽量で目測ベースのものをしきりに勧めており,目測は恐るるに足りないと言っています.確かにそうかと思います.近接時は難しくなりますが,(この書籍の著者らの写真もそうですが)町並みや風景などが主だと目測で十分で,下手に距離計を使わないほうがよかったりもしますし,ファインダも下手なオプティカルよりはフレームが良いと言っています.そういう中でちゃんとコーティングされた性能の良いレンズ,しっかりしたボディというと実は選択肢が少なかったりもしますが,このエンサインは良いですね.Simple is the best.

エクスプレス付きのレンジャーは少なそうだから僕もセルフィックスあたり探そうかな,と,早速感染しております.危ない危ない..
日浦 2016/02/13(Sat) 22:27 No.155
Re: エンサイン レンジャー
コメントありがとうございます。
私もレンジャーにこのレンズが付いているのは大変意外でした。
本体ジャンクという記載だったのでレンズをセンチュリーグラフィックに流用する意図で注文、到着すると?問題なく使えています。

820はかつてクラカメ専科で絶賛され、高嶺の花がさらに成層圏まで行ってしまい諦めています。
ただ820だけはベッドごとレンズを前後させる機構で、セルフィックス以下前玉回転と差別化されています。
果たしてエクスプレスで全群繰り出しと前玉回転の性能差がどれほどあるか、単体レンズでお試しの方が居られたら是非ご教授いただきたい(本来はジャンクレンジャーから外して自分で試すつもりだった)ところです。
セルフィックスの前玉回転レンズでも、無限遠画質を友人が絶賛しています(マッタリしま専科)ので、実用上遜色は少ないのではと想像しています。

仰る通り、戦前初期の大判エクスプレスはライツアナスチグマート同様テッサー特許逃れのため(と評される)3群目3枚貼り合わせが有名ですが、性能上顕著なメリットはなく精算難易度とコスト浪費なので早々に4-3のテッサーアナログになってしまったようですね。

4-3ではMPPマイクロコード77/3.5が大変美しい描写をしますので信頼しています。
5-3とされるモデルと使った事がなく、優越があったかなかったかは興味があります。
マルテックス装備のガウス型エクスプレス2インチf2がありますから、レンズ構成に付けられたのではなく、エクター同様上級機種に冠される名称なのではないでしょうか。

畳んだレンジャー。それほどフラットにならない。程よくアールが付いていてカクカクしたイコンタ系と随分違う。戦前オートレンジのように薄く完全フラットになればもっと魅力的なのに...

れんずまにあ 2016/02/14(Sun) 17:10 No.165
Re: エンサイン レンジャー
SuperIkontaのOpton Tessar105/3.5との比較試写。
個体差もあるのでしょうけど、Xpres105/3.8の尖鋭さはTessarを上回っています。
このTessarは全画面均一な描写をしてくれて、外れ続きのスプリングカメラ遍歴の中で久々に胸をなで下ろしている個体なので、Xpresの凄さが余計にわかります。

どちらも前玉回転の無限遠比較なので、Ikontaは最高の解像力が期待できる条件ではありません。
Ikontaは有限距離(3-5m)付近でレンズ間隔が収差最良になるため、無限と最短は性能が落ちるのです。どれくらい落ちるのかは明言できる経験がありませんが。
ひょっとするとXpresは無限を基準に調整されていたのかもしれず、総合的な比較はもっと様々な被写体で確認する必要があります。
れんずまにあ 2016/02/17(Wed) 00:03 No.167
Re: 光線引き
実は蛇腹が穴だらけでして、それが安い原因でした。
角という角が全て穴で星空状態なので、張り替えが唯一の補修なのですが、張り替える自信がなく、取り敢えずパーマセルを裏表に貼り付けて凌いでいます。
それでまあまあ使えていたのですが、先日謎の光線引き。
余白も感光していますから、蛇腹の穴とは考えられません。この位置をよく見ると、赤窓からのよう。

実はレンジャーの赤窓は赤くありません。単なる穴で、貫通しています。
一応スライドで閉鎖できるようになっていて、ものぐさでここを開いたまま陽光下持ち歩いたからだろうと思いました。

画質は非常に高く、ほれぼれします。
今撮り比べ中ですが、開放コントラスト、周辺の切れ共にテッサー105/3.5を凌駕します。ヘリアとは多分同レベル。
これより良いクラシックの100mmクラスは、メダリスト以外に知りません。
ただレンジャーのシャッター最高速は1/100、しかもレリーズ位置が手持ちには不適切なので、下手すると手ぶれします。今回の手持ち試写では手ぶれ量産しました。

エクスプレスを使うならセルフィックス以上のクラスをお勧めします。
私はレンジャーでもちょっと頑張ってみますが。

Eisign Ranger, Loss Epres 105/3.8, f3.8, 1/100, Kodak T-Max400, Fujidol 25dig, 6min

れんずまにあ 2018/10/03(Wed) 21:35 No.1405
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