KOWA Six シリーズ
興和の電気光学事業部が1968年に発表した6×6サイズのレンズシャッター式一眼レフ。
●ボディー
4種の代表的な機種が有ります。
・Kowa Six
:スピゴットマウントを採用した小型軽量の1眼レフ。クロームのボディーと白鏡胴のレンズで登場しました。
スクリーン上部に大きめのコンデンサーレンズを配置した非常に明るいファインダーを持っています。
機構が単純な分、シリーズの中では最も軽快に扱えるカメラです。
・Kowa Six MM
:ボディー上部側面にクラッチを設け、多重露光が可能になりました。さらに巻き上げノブ下部にミラーアップ用
スイッチを配置してレリーズボタンとの併用でミラーアップが可能がなりました。
交換バック以外は充実した内容となり、この頃55mm、150mmが新設計になったと思います。
・Kowa SixU
:機構を見直しダークスライド不要のL字型交換式フイルムバックを装備しました。ミラーのエアーダンパー等
改良が図られましたが、全体的に大型化しました。レンズ固定が光軸中心に若干回転して固定されます。
アクセサリーレール側にミラーアップクラッチレバーが有るところと銘版がSuper66とは異なっています。
・Kowa Super 66
:プロユースのノウハウから操作性面の見直しを行い、ファインダー視野率の向上とフイルムバックのロック機構
を簡略化し、さらに不安定要素だったU型に有ったミラーアップを廃止しました。
一般的にはブラックのボディーを見かける事が多いのですが、クロームボディーも用意されていました。
初期のコーワシックスの特徴として小型軽量があげられます。特徴的なハンドルグリップも数種用意されています。
ただ三脚に取り付けたままだとフイルムの交換ができない点は最後まで残ってしまいました。
(このため三脚用のブラケットが別売されましたが三脚座そのものが小さいので丁寧に扱う必要が有ります。)
フイルム巻き上げが完了すると巻き上げノブのクラッチが切り離され、ノブが空転するのは
他機種を使っていると驚かされます。
巻き上げ部のラチェット機構を見るとクランクでの操作は避けた方が良いと思います。
リンク機構には真鍮が多用され、材質的に脆弱な部分が多い点は否めないと思います。
フォーカルプレーンシャッターのブロニカに対し、レンズシャッターのコーワシックスはストロボの全速シンクロが特徴で、
超高嶺の花だった北欧の機械の代わりに実用的な国産機の地位を確保していました。
レンズシステム
殆どのレンズはプロミナーの血統を継ぐ優秀なレンズで、ビトゥイン型の#0セイコーSLVを搭載し、
初期はシルバーフィニッシュ。後期はブラックアルマイトになりました。
(レンズはSタイプとなって小型化されましたが、この時期はシルバーとブラックが混在)です。
シャッターにSLVの名が示す様にセルフタイマーも付いています。
プレビューもレンズ側で備えています(プレビューのレバーはスプリングで戻されますが、ゆっくり戻さないと
スプリングが外れる事が有りますのでご注意下さい。)
●レンズ
用意されたレンズは以下の13種。正直玉石混合だと思います。
レンズ銘 最短撮影距離 フィルターネジ
・19mm F4.5 0.4m フィッシュアイ
・35mm F4.5 0.4m φ95mm (レンズ後端にゼラチンフィルターホルダー)
・40mm F4.0 0.4m φ95mm (レンズ後端にゼラチンフィルターホルダー)
・55mm F3.5 前期 0.5m φ86mm
・55mm F3.5 後期 0.5m φ67mm
・85mm F2.8 0.8m φ67mm
・85mm F2.8 0.8m φ67mm
・110mm F5.6 0.8m φ67mm マクロ
・150mm F3.5 前期 1.5m φ77mm
・150mm F3.5 後期 1.5m φ67mm
・200mm F4.5 2.5m φ67mm
・250mm F5.6 4m φ67mm
・500mm F8.0 8m φ95mm
55mmと150mmは途中で設計変更が入り、ずいぶんと小型化されました。
ボディー側の三脚座が小さいので19mm、250mm、500mmにはレンズサポートが用意されていました。
システムカメラなので交換ファインダーも各種用意されていました。
・W/Lファインダー
・高倍率ファインダー
・水平/45°アイレベルファインダー
・チムニー/45°露出計付ファインダー
・フレームファインダー
その他、特徴的なハンドルもサイドグリップが二種、ピストルグリップが一種用意されました。
他にも製薬部門も持つグループだっただけに中判カメラでは珍しい顕微鏡アタッチメント等も有りました。
66判一眼レフではポピュラーな標準80mmに対し,ブロニカが75mmと短いところ,コーワは 85mm と少し長く,全速シンクロするレンズシャッターと相まってポートレート派にはよさそうですね.またブロニカでは,魚眼レンズは試作機どまりで発売されなかったようですが,コーワには(珍品ですが)全周魚眼があるのが羨ましく思います.もっとも,レンズシステムを一通り収集しようとすると,35mm ともども,苦労しそうですが..
特筆すべきは極めて低ショックなことで、手に伝わる感触がブロニカS2は勿論ハッセルブラッド501CXとも段違いのジェントルさです。
ブロニカS系はミラーが戻る際に衝撃が生じるので、よく知らない人々が言うほどぶれませんが、クイックリターンでないカメラの中でもコーワは優しい感触でしょう。
三脚セットのままフィルム交換出来ないのは裏蓋側に三脚座を持つ大方のTLRと同じですが、暗がりで三脚穴がなかなか探せなくて非常に困ったことがあります。
氷点下で同時に12-24切替しようとしたので手袋では結局出来ず車に戻ってフィルム交換やりました。
後に出た三脚アダプタはグリップと共用出来ず、アクセサリで対応するには限界がありますね。
クイックシューは解決策で、接触面積が小さい製品なら裏蓋開閉ノブに干渉せずに設置できます。
顕微鏡アダプタはレンズなしのシャッターユニットで、接眼スリーブに被せる構造です。ヘリコイドがあるのは顕微鏡との接続を微調整するためでしょうか。
引き伸ばしレンズなどを接続できるかと思いましたが、オリジナルでは顕微鏡専用ですね。
接写システムには問題があります。
SixとMMは、レンズマウント開口部が異様に小さいのです。
接写リングを長めに挟むと容易に四隅が蹴られてしまいます。
66ノートリミングで作画する風潮は最近のものでしょうから、販売当時は問題にしていなかったのでしょうか。
恐らく長焦点レンズ設計にも大きな制約であったことでしょう。250と500mmはレンズ構成に気を遣っていることが見えます。
レンズマウント位置に環状のレンズ駆動部を設けたおそらくキルフィットの元設計からこの問題はあったのでしょう。
マクロキラー90mmのように主点がはるか前方に行ってしまう設計では蹴られは苦しかったのではと想像します。
Super66になってからマウント開口部が少し矩形になり拡大しました。
レンズ駆動部を避けるため、レンズ装着の位相が斜めになりました。
それで蹴られは解決したかというと、多少マシになった程度です。それでも進歩だとは思いますが...
今度は接写リングの開口部でも蹴られてしまうようです。条件など詳細はへっぽこ親爺様の掲示板が現在見られませんのでお許しください。
35mmは類を見ない野心的画角ですが、それにしては小型で、大変高性能ですね。
ビオゴン38mm並とは申しませんが、40/4より設計が新しい分、写りも現代的に思います。
110/5.6マクロは、実際の開放f値はf3.5くらいありますが、撮影時にはf5.6まで絞り込まれるようになっています。焦点合わせのためでしょう。
オリンパスOMマクロ135/4.5もそのような機構ですね。
110はリーフシャッターSLR用マクロの例に漏れず、単体では近接能力が高くなく、どうしても接写リングのお世話になりますので、蹴られ問題は深刻です。
ベローズもありますが、蹴られはどうなっていたのでしょうか。
19と500は経験がありません。500は現物を見ましたが入手断念する価格でした。
友人がテレコンを入手しました。とても珍品です。最近フラッシュ接写でテレコンを見直していますので、羨ましいです。
写真>Kowa 6MM, 110/5.6, ext.tube#1+2, 霜柱,絞り開放,1/60,Reala120,手持ち
110mmでもケラレますか。EXTチューブはダメだろうなと思っていたのですが。
何かメーカーからのコメントでも残っていれば良かったのですが…。
私は40mmを使っていますがかなり着色のひどい状況です。ポジでは使えません。それでも6×6の40mmは使い易いです。
40は黄変していますか。当家の40は全く着色がないとは言いませんが、ポジで支えないほどの黄変はありません。
個体差なのでしょうか。
110は単体ではけられません。一番長いNo1でヘリコイドを伸ばしきると蹴られが出てくるようです。
折角のマクロ、倍率を上げたいのですが、困りますね。
ベローズは現物を見たことがありませんが、構造に興味があります。
写真>Kowa Super66, 110/5.6開放,等倍(Ext.tube3+2だったかな?
66-67のマクロを一堂にテストしたときはここまで蹴られたレンズは皆無でした。
そんな時にレバーにかかっているスプリングが外れた事が有ります。ご注意下さい。
ストロボを使用するとブレはかなり解決します。特に小絞りを多用し、ぶれやすい接写ではストロボは大変便利です。
ところでストロボシンクロにはレンズシャッター(リーフシャッター)が有利です。
フォーカルプレーンのブロニカはシンクロ速度が1/30〜1/40と低速で、絞り選択の自由度が制限されます。
コーワ6シリーズはリーフシャッターなので最高速1/500から全速ストロボ同調するため、背景光とのバランスをとりながら、撮影距離や絞りを最適に調整できます。
ところでフラッシュは色々あれど、コーワ6のようなマニュアルカメラでも自在に接写自動調光できるのはナショナル(パナソニック)です。
マクロフラッシュセンサという光ファイバーを、ストロボのセンサーに接続し、レンズ先端にクリップします。
いくらか補正をする場合もありますが、一度調整するとリニアリティがあり、適正露光が一発で得られて非常に便利です。
ナショナル時代の末期モデル、パラメータを広範囲に選択出来る「ストロボット」シリーズは特に自由度が高く高性能です。
こちらの例は、コーワスーパー66,110mmマクロ、T1,2,3リング、
ナショナルPE-381SG、リモートセンサPW15、マクロフラッシュセンサ
何となく自作も出来そうですね。
私は接写をあまり行ないのですが、リーフシャッター機にサンパックの小型外部調光ストロボを良く使います。
ストロボのISO感度を+2EVになる様にセットして、ポジでパカパカあまり考えずに写しています。
れんずまにあ様 どうも”カメラのナニワ ¥1000”が気になってしまって。
最近完動品でもそういう価格なんですよね。この380SGは電池室腐食がありましたが、それがなくても同様でしょう。
ナショナルの高級クリップオンタイプは300円くらいからありますしね。
改造も、惜しげもなく可能です。
確かに光ファイバーを外部調光センサー窓に接続すれば自作は十分可能だと思います。
センサーサイズに対してファイバー径が小さくなるのでF値は補正を要するでしょう。
純正マクロフラッシュセンサのキモはレンズ先端に止めるクリップです。
フィルタースレッドに咬み込む凹凸とアールが付けてあり、被写体に向ける角度を調整するフリクションが適切です。
この使い勝手を自作で出すのはなかなか大変かなと。
ナショナルの対応機種の外部調光センサー窓にはファイバーを接続するソケットがあり、ファイバー側の一端にはプラグがあります。
ソケットがない機種のために1本プラグを削り落としてホットグルーで貼り付けましたが、ちゃんと動作しています。
マクロフラッシュセンサは中古500円くらいから見ますので、光ファイバーを買うより安く付くかもしれません。
画像ぶれてしまってすみません。
上:ナショナルPE3057(クリップオンタイプ)の外光センサー窓部ソケットと、マクロフラッシュセンサ先端クリップ部、末尾プラグ部
下:マクロフラッシュセンサのプラグ部を削り落としてリモートセンサ2型に接着。ネジで補強しているが不要かも。
この様な撮影は500mm位有れば良いのですが、250mmです。
リヤコンが欲しいなぁと思いました。
Kowa Super66 250mm F5.6 NPS 160
ちょっとした勘違いで時間を逃してしまいました。
残照を背景にした江の島です。もう少し経つと灯台に灯が灯ります。
Kowa Super66 250mm F5.6 NPS 160
KowaSix 用の40mmは設計が古い事も有って巨大です。
正直、ツアイスやニッコールの中判カメラ用の40mmと比較すると、一歩譲るかもしれませんが、それは味として楽しんでいます。
こんな感じで、江の島灯台はライトアップされます。
Kowa Super66 40mm F4.0 NPS 160
常用レンズの口径が67mmに統一されたMM時代に登場した。
サイズは標準レンズ85/2.8に次いで小型。
完全自動絞りで、ピント合わせ時には口径比がおそらくf3.5くらいに大きいが、撮影時に最大絞りがf5.6まで絞り込まれる。
収差や口径食が減少する効果と、ピント合わせの容易さ、スプリットイメージをかげらさない効果を両立させている。
最短撮影距離は0.8mで、単体では85mmより拡大率は高いがそれほど高倍率にできるわけではない。
近接には適宜ベローズや、エクステンションチューブを併用することになる。
このときネックなのが蹴られ問題。
SIXとSIX MMはマウント開口部が小さいため、3種チューブで最長のT-1で110のヘリコイドを伸ばしきると四隅が蹴られる。
T-1,2,3を重ねて撮影も可能だが、相当けられることを覚悟せねばならない。
Super66は、マウント開口部が拡大され、T-1単体では蹴られなくなった。しかしT-1,2を重ねてヘリコイドを伸ばすと蹴られが出てくる。
蹴られは、66フルフォーマットで作画する場合気になるが、中心部のみや、645にトリミング前提なら構図に影響しない。ものはつかいようだと思う。
性能は、素晴らしいと思う。
普通に店頭で購入できる望遠。
ほとんど同じ画角だが、200のほうがかなり小さく、少し明るい。
200のほうが後で出たからか数が少ない。
250 はクローム仕上げもある。200のクロームは見たことがないが、黒のみ?
これ以上は、500mmが存在するがめったにお目にかかれないし、テレコンバーターx2も非常に珍品で入手困難。
定番の交換レンズ。
どちらも非常に評価が高い。
前期型は55mmも150mmも大柄で、後期になって劇的に小型軽量化された。
こちらは後期型で、55mmから250mmまでφ67mmフィルターサイズ。
少し周辺減光が大きいレンズです。いまだ発展途上に有ったレンズタイプの超広角レンズなので、
素晴らしい性能とは言えないと思いますが、中判一眼レフで40mmが使えるのは福音です。
ディスタゴンの初期タイプよりも一回り小さいのですが、ニッコールやゼンザノンと比較すると大型です。
110mmは殆ど見た事が有りません。Super66はケラレを改善するために、レンズマウントを傾けてスペースを作ったのですが、やはりケラレるんですね。
他社の優秀40と同時試写はまだしておりませんが、モノクロームではそれほど瑕疵が見えず、なかなか良好に感じました。
昨今は、昔のように気軽にポジ試写ができない実情です..
画像は同じ立ち位置から、35mmf4.5(左)と40mmf4(右)を開放試写したものです。厳密な比較とは言い難いのでご参考まで。
新たに導入したボディで、ネガがキズキズになってしまいました。これから原因究明します。
Kowa Super66 chrome, T-Max400, スーパープロドール3分
エクステンションチューブの蹴られ問題は悩んでいます。
SixMMでの蹴られはボディ開口部によると思われますが、Super66ではチューブの後端で蹴られているように見えます。
Super66に合わせてチューブ後端を切り取れば効果がある可能性がありますが、踏ん切りがついていません。
並べると、フィルターサイズが同じ95mmなのでそれほど差を感じませんが、ボディに付けると重量、前後長がかなり違って感じられます。
35mmのコンパクトさが際立っています。
拙宅の35mmは後玉バル切れ、商品としては表にだせないものだったようです。
今のところ写りには大きく問題はないように思います。
6×6サイズで35o。魚眼レンズでは無いタイプはとても珍しいですね。
流石に極周辺は流れてしまう様ですが、立派なものだと思います。
ケラレはその手の撮影が多い方には深刻ですね。リヤコンが有れば良いのかも知れませんね。
屋外マクロ撮影していて、どうしても光量不足で絞りきれないことが多く、フラッシュ接続を考えました。
従来型のグリップフラッシュ(投稿No576)ならオートも効くのですが、若干嵩張ります。
そこで、最近サンパックのマニュアルリングフラッシュGX8Rが非常に安いです。
そればかりか、ジャンク箱に発光部だけ1コインで転がっていて、即座に改造を思いつきました。
元々最大口径φ58mm用なんですが、発光管は巧く行けば中判でもクリアしてくれるはず。
スクリューマウント部を外し、ケンコースクエアフィルター用φ67mmアダプターにホットグルーで貼り付けました。回転は出来ないけど、できるだけレンズ側に近づけないと蹴られが心配です。
カメラ側もフラッシュ側もマニュアルなので、昔であれば気が遠くなる試写を繰り返しデータを取る必要があったはずです。
でも最近はデジカメがあります。
カメラ裏蓋を外し、アパーチャー部分にレンズを外したソニーNEX5を置き、周囲を暗黒にした後で1秒露光中に、コーワ側のシャッターを切ってフラッシュシンクロさせます。
ちゃんとレンズがシンクロするかテストにもなりますね。
NEX5側からみればオープンフラッシュです。もたもたしてるとNEX-5側が先に閉じちゃいます(笑)かといってあまり長時間露光にしたら、暗室じゃないから定常光の比率が無視できなくなる。手早くやるしかありません。
これで距離に応じた絞りと発光亮(フル、1/2、1/4がある)との関係を記録し、フラッシュに貼り付けます。
110mmf5.6最短とT1の組み合わせでは、フル発光f32が適正でした。後にフィルムで実写してこのチャートが適正であることを確認しました。