FM3A 用フォーカシングスクリーンを斬る!


左から,K, K2, K3 の各スクリーン(外箱は一部違います)


FM3A のスクリーンはどこが変わった?

結論から言って,FM3A 用スクリーン K3 の変更点は,

というような変化があり,私個人としては,「とてもよくなった!!!」と感じます.
(ボケの不自然さ,色づきなどで,気に入らなかった方もおられますが・・)
特にマット面のざらつきが減り,ピントの山が鋭くなったことで,細かいテクスチャ
に対しては特にピントが出しやすくなったと思います.またスプリット部が弱くぼける
特性も,複雑な模様や繰り返し模様で使いやすく,好ましいと思います.

ここでは,主に K2 との比較について述べていきます.


外観


FE 用 Kスクリーン


NewFM2, FE2, FA 用 K2スクリーン


FM3A 用 K3スクリーン

一見してわかりますが,K スクリーンは,K2 や K3 に比べ,より「マット」な感じで,
少し暗いスクリーンということは予想が出来る外観です.K2 スクリーンは,スリガラス
から作成した母型を,酸で処理して作成していると言われており,実際,そのような
(山が均された)感じを受けます.

マット面の差は,K2 と K3 ではほとんど分かりませんが,,光にかざして見ると,
スプリット部のツヤが違う(K2 は,光を反射して輝くが,K3 ではマット面のような感じ)
で,やはりスプリット部の変化を予想させます.

K と K2 では,ピンセットで摘む部分の形状でその種類を判別しましたが,K3 では
この部分に K3 と明記してあります.


マット面の変化


元画像(合焦時)


K2スクリーンでぼかしたとき


K3スクリーンでぼかしたとき

普通の条件では,スクリーンのざらつき感を画像に収めるのは難しいので,最も
ざらつき感を感じやすい,「光源のボケのエッジ」を撮ってみました.
一見して分かるように,K2 スクリーンではざらつきの目が粗く,これが K2 の
欠点の1つだったと思います.K3 スクリーンでは,そのざらつきが大変細かく
なっており,ほとんど問題にならないレベルと言ってよいと思います.

ただ,よく見ると,スクリーンの目は垂直・水平の細かい規則的な模様を持って
おり,そのざらつき感はあります.

ぼけのピークの鋭さは,たぶんに感性的なものであり,また細かいぼけを問題に
するので,カメラのアイピース越しにデジカメで撮影,という方法には限界が
あります.上では,K3 スクリーンを用いたときの,ドライバーの先端付近に
ピントを合わせたときのボケの様子を示しています.ちょっと,二線ボケ風に
ぼけていくのが,ピントが見やすい理由のようです.

これは,無限遠と見なせる距離にある,工業団地の照明を大きくぼかしてみた
ものです.ちょっと暗くて,見にくいのですが,ドーナツ状のボケと,中心の
芯の部分に分かれていることが分かります.ドーナツの,最も明るいところの
半径は F3.5 ぐらいのようで,そこから外側にも,内側にもなだらかにボケが
広がっています.実際には,このドーナツも,細かい模様を持っているのですが,
暗くてピントが合わず,うまく撮れていません.


スプリットプリズムのマット化


元画像(合焦時)
上下方向に,若干の奥行き変化のあるシーンです


ピントを外したとき
 


さらに大きく外したとき
 

これが,今回の K3 スクリーンの最大の変化といっても過言ではないでしょう.
上を見れば一目瞭然のように,スプリットプリズム内でもボケが発生するように
なりました.その量は,周囲のマット面よりも小さく,また,左右方向のボケが
上下方向よりも大きくなっています.(スプリットプリズムの下部に,縦エッジと
横エッジの双方を入れたので,それがわかると思います.)

これは,(信号処理論から考えても)大変正しい処理ということが出来まず.
なぜなら,大きくピントが外れている時には,細かい模様を潰し,大雑把な模様で
ピントを合わせることが出来(空間周波数の低周波成分を利用していることになる),
ピントが合うにつれて細かい模様が現れ,ピントがより精密にあわせることが可能に
なっていきます.AFセンサも同様の原理で,ピントの誤判定を避けるようになっています.

細かい木々の枝などにピントがよりあわせやすくなっているのではないかと思います.

なお,良く見ると,このスプリットプリズム部には,縦に細長い X 字型の模様が
見られます.つまり細かいマイクロプリズムとマット面の中間的性格を持っており,
像を対角の4方向にずらすようにして画像のボケを得ているようですが,この X 字の
角度が,横に圧縮されたような形状になっているので,横方向のボケが縦方向より
強い,という格好になっているようです.またその結果,エッジの像は,なめらかに
ボケていくというよりは,1本の縦線が2本に分離していくようにしてボケていく
特性をもっています.


元画像(合焦時)


ピントを外したとき


さらに大きく外したとき

この写真を見ても分かりますが,少しピントを外したときの絵で,像が左右2つに
割れているように見えます.また,マット面のほうでも,点光源が円環状にぼけて
いることが分かります.


なおこのテストは,Nikon FG にスクリーンを装着して行いました.
レンズは AiS 50mm F1.8 (国内版),またスクリーンの画像は,COOLPIX910 の
対物レンズがファインダアイピースに接するようにして撮影しています.

ニコンFG には,K3 スクリーンはそのまま装着できます.(突起の部分を少し
削ったほうが,入りやすいかもしれません.)
ちなみにこの FG は,以前,修理業者により K2 スクリーンを装着され,
露出計はこの K2 スクリーンを用いて校正されています.開放F値が
F1.8 のレンズと F3.5 のレンズを装着し,較べてみた結果では,露出値は
まったく変化がなかったと言ってよいと思います.

私は,このスクリーンを大変気に入ったので,このまま K3 を装着して使って
いこうと思っています.


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