ジェネバ機構デジタル時計

ポイント

コンセプト

連続した回転運動を間欠運動に変換する、ジェネバ機構は人気のあるメカニズムの1つである。これを使えば機械式のデジタル時計の桁上り(繰り上がり)を容易に実現でき、これまでにも機械式7セグ時計ニョキパタ時計でも利用してきた。しかし、これらの時計ではジェネバ機構はいわば裏方であり、その動きがよく見えるようにはなっていなかった。そこで今回、このジェネバ機構をあえて前面に出し、その動きを楽しめる時計を作ってみることにした。

今回の設計意図として、部品点数を限りなく少なくすることを意識した。他の時計では、数字の部品を別にプリントして貼り付けるなどの方法をとっているが、今回の時計では数字を穴で表現することにより、プリントするだけですべての文字が現れるようにした。一部の部品の素材色を変えてプリントすることで、時刻を表す部分の数字もはっきりと分かるようになった。これにより各桁の部品が薄くなり、各数字の前後方向の高さの違いが抑えられるというメリットもある。

今回の時計の魅力の1つに、ジェネバ機構がよく見えることが挙げられる。そこで、いかにもジェネバ機構らしい10分の桁だけでなく、時間の桁もピンが入る様子が見えるような形状とした。

設計

ジェネバ機構の特徴として、間欠動作中かどうかにかかわらず、被駆動側の動きが規制される(空回りしない)ことが挙げられる。しかし、時計の時刻合わせをするには任意の桁を回転させる必要があり、この規制を解除する必要がある。そこで今回、10分と時間の桁の軸が横方向にスライドするメカニズムを考案した。上の動画中に時刻合わせの様子が入っているのでご覧いただきたい。部品の脱着などを伴わずに簡単に時刻合わせができる上、各桁の位置合わせも不要である(手を離すと、数字の上下のズレが補正される)ことがわかる。

本来のジェネバ機構では、ピンが入るスリットが、ピンの軌道(円)の接線に沿っていることが望ましい。しかし、このような時計を作る場合、1分の桁の 1/10 回転(36°)の間に10分の桁を60°回転させる必要がある。また時刻の桁は1回転の1/12(30°)しか一度に回転させてはならない。そのような制約があるため、どうしても「正式な」ジェネバ機構の設計セオリーからは少し外れることになる。そのような構造ではピンがスリットに入ろうとするときに引っかかりやすいという問題があるため、形状を微妙に修正してそのような問題が起こらないようにした。

これまでの時計に比べると非常にシンプルで、形も特殊なためどうかと思ったが、それがかえって面白さにつながっているようで、作成報告も順調に増えている。例によって3DデータとプログラムはThingiverseInstractablesで公開している。