ブロニカQ&A

このブロニカQ&Aは,初代のブロニカからの設計を引き継ぐフォーカルプレーン式ブロニカに関するFAQです.現行モデルへと引き継がれている,ETR, SQ, GS-1 系に関してはほとんど記述されておりません.ごめんなさい.

Q:ブロニカは重い?

A:ブロニカはフォーカルプレーン式シャッターで,また様々な安全機構などを内蔵していますから,ハッセルブラッドなどに比べ若干重量がかさむ面は否めません.たとえばS2型では標準レンズ込みで 1780g です.ハッセルブラッド 500 系は 1500g 弱ですから,確かに重いといえます.ですが,同じフォーカルプレーン式で比較したらどうでしょうか.これは形・寸法が 500C 系などに近いので,同じぐらいと思われがちですが,実は現行型の 200 系モデルは1650g 近辺です.しかも,ブロニカは繰り出し機構がカメラ側についており,もちろんシャッターもついていませんから,レンズ単体の重量がより軽量となっています.結果として,レンズを2,3本同時に持ち歩くことを考えると,むしろ軽いといえるでしょう.しかもブロニカは総金属製で,最近のハッセルブラッドのレンズのようにプラ部品は用いられていません.また他の中判カメラ,たとえばローライフレックスSL66 や 600x 系もなかなかの重量級ですし,マミヤRB, RZ も同様ですから,これらと比べるとブロニカEC(2kg 付近)も平均的と言えるでしょう.

それでもなお,絶対的に軽いカメラがよいというなら,それは,ブロニカDしかありません.これは,レンズ・バック込みで公称 1400g です(実は,私の実測では,もう少し重かったのですが・・)これは,66判一眼レフカメラの中では最軽量なものの1つと言ってもよいでしょう.「ゼンザブロニカ」は重くないのです.

Q:ブロニカは壊れやすい?

A:ブロニカはどの機種も比較的複雑な構造をしており,一般に壊れやすいと言われているようです.確かにニコンFなどと比べると壊れやすいといわれれば,そうかもしれませんし,頑丈でシンプルな作りのハッセルブラッド 500C/M と比べると分が悪いかもしれません.しかし私を含め周囲を見る限りでは,それほど悲観的ではないと思います.特に最終期のモデルは頑丈になっていると言われています.なぜなら,ブロニカはプロが利用するようになるにつれ,その要望にこたえる形で耐久性の向上とシンプル化を中心とした発展の過程を辿ったからです.特にS2の後期型(後述)は,ギアの材質・処理の変更等により大変頑丈なものとなっており,われわれアマチュアが撮影する程度のペースではほとんど壊れないものとなっていると思います.

ブロニカは徹底したフールプルーフ機構をもっており,操作ミスにより壊れることがほとんどないのもいいところです.たとえばレンズシャッター式のハッセルブラッドでは,巻き上げを終了した時点でレンズを取り外すことになっており,ボディとレンズの組み合わせを間違えて装着するとレンズが取り外せなくなり,重修理扱いになります.ブロニカではこのような問題点はありません.また同様にハッセルのレンズシャッターは,ブロニカと同時期のものではネバリが出ているものが多く,小絞りでシャッターを切った場合,シャッターが切れる瞬間までにレンズが絞り込まれないという事故も多く見られます.ブロニカ用のニッコールレンズでは,自動絞りがこのような状態に陥っているものを私は見かけたことがありません.またS2型やEC型では,引き蓋からの漏光事故がほとんどないことも美点でしょう.その他を総合すると,一般に頑丈と言われるハッセルブラッドに勝るとも劣らない信頼性であると言えるでしょう.

ブロニカD型やその後のS2型までのカメラは,より壊れやすいといわれていますが,私の範囲ではその真偽は不明です.たとえば,ブロニカDは,シャッター走行終了前に無理に巻き上げるなど無理な操作をするとシャッタージャムとなることがあると言われていますが,この状態に陥ったときに解決するためのネジを持っています.特にブロニカの機械式シャッターは,幕間隔を遊星歯車で保つ構造となっているそうで,シャッタームラなどは大変少なく正確なシャッターと言われています.

ただしハッセルブラッドは外装が大変頑丈なダイキャストとなっており,落下時の故障に関してはブロニカのほうが壊れやすいのではないかと思います.

Q:ブロニカは修理出来ない?

A:フォーカルプレーン式ブロニカの修理を,現在のタムロン株式会社に持っていっても修理は受け付けてもらえません.また複雑なカメラですから,たいていのカメラを修理する「修理屋さん」泣かせのカメラで,こういう普通の町の修理屋さんでは修理を断られるケースが多かったようです.そのため,「ブロニカは壊れたらおしまいだ」のように言う方がおられますが,これはまったくの間違いです.ほぼ完全な修理が可能です.「イストテクニカルサービス」に相談ください(連絡先はトップページに記載).ブロニカの修理に必要な部品を大量に保有し,またブロニカの修理を長年手がけてきた,ブロニカ専門の職人さんがいらっしゃいます.たとえばS2については,最も力がかかり壊れやすいとされる巻上げ部のディファレンシャルギアは,交換により修理されます.またEC系の機種についても,この頃の電子カメラではたいてい,「飛んでしまうとおしまい」と言われる電子回路ですが,これについても最終型の安定した電子回路部品を保有しているそうです.OHを含むほぼ完全な修理が出来るというのは,この時代のカメラとしては少ないほうで,むしろ「修理の出来るカメラ」というのが正当な評価と思われます.

ただしD型,S型については部品がなく,修理が難しい状況のようです.

Q:ブロニカはブレる?

A:いわく,ブロニカはフォーカルプレーンシャッター式のカメラだから,ブレやすい.しかし,一眼レフ式のカメラで支配的と言われるのは,ミラーショックです.ブロニカのシャッターは,ライカのような布幕巻き取り式のシャッターですから,そもそもショックは軽微なのです.その証拠に,私はブロニカEC型でマクロ撮影などをけっこうやりましたが,ブレが問題となることはありませんでした.レンズシャッターに比べれば,確かに不利であることは否めませんが,問題といえるレベルではないでしょう.また,同様の布幕でより高幕速のハッセル200系と比べたらどうなるでしょうか.

では,問題のミラーショックですが,これについてもブロニカは手を抜いているわけではなく,ちゃんとブレの大きさを実験で検証していることなどが文献から確認されます.ただし,どうしてもブレは残ります.しかしこれはハッセルブラッドも同様で,(ハッセルブラッドは優秀と思いますが)五十歩百歩です.ただ,ブロニカはクイックリターン式ミラーで,そのミラーが復元する瞬間のショックは事実上野放しなので,それが生理的にショックが大きいと感じさせるようです.またこのときの音が大きいのは有名で,S2型のようなミラー降下型,EC型のような分割型ともにうるさいのは確かでしょう.

ブレを嫌うときには,ミラーアップ(もしくはミラーの先落とし)を利用するのが有効ですが,残念ながらこれはS2型などでは不可能です(ただし,ハッセルブラッドも 500C/M(1970年)以前のモデルはミラーアップが不可能で,ブロニカがS型(1961年)先行しました).ミラー退避が出来るのは,S型(ボディ底面にミラー退避ノブあり)とEC系列です.またD型もセルフタイマーを用いた場合,先にミラーと絞りが動作を終えるので,ショックを避けることが可能です.D型では,ミラーの先落としが可能なバージョンもあるようですが,詳しいことはわかりません.

Q:ブロニカは高い?安い?

A:一部のモデルを除き,ブロニカのカメラは比較的安価にて入手が可能です.最も入手が容易なのは,やはり最も長期間,最も多く発売されたS2型で,標準レンズ付きで4万円前後から入手可能です.状態はまちまちなので,よく選んで購入するとよいでしょうが,比較的頑丈で安心して使えるカメラです.次に入手が容易なのは,EC型(5万円前後)でしょう.どちらも信頼性は比較的高いと思います.ECはS2よりやや大柄で重いですが,ミラーアップや多重露出が可能で,スクリーンも交換可能というメリットがあります.また EC-TL, EC-TLII 型は,プリズムファインダを取り付けなくても露出のチェックや自動露出が可能なカメラですので,お手軽に撮りたい,または露出計を持ち歩きたくないときにはよいと思いますが,若干高価(6〜8万円程度)となります.

フィルムバック非交換式のC,C2(Cを220 対応に)は廉価版の位置付けでしたが,数が少なく,現在では値ごろ感は少ないでしょう.どちらにしてもほとんど見かけないので,コレクター向けでしょう.また,ボディにヘリコイドが組み込まれたS型,D型も数が少なく,特にD型はコレクターアイテム化しているため最も高価で,おおよそ15万円前後で流通しています.といっても,ハッセルブラッドの入門機,500C/M 型と同価格帯ですが・・

レンズについても比較的廉価と思います.ブロニカ用ニッコールとしては,特殊なもので数が少ないものでなければ,ほとんどが(50mmF3.5, 50mmF2.8, 75mmF2.8, 135mmF3.5, 200mmF4)が3万円〜4万円付近で流通しています.数が少ないものとしては,超広角 40mmF4 で,これは6〜8万円,またレンズシャッター式の 105mmF3.5 も少なく,場合によっては高価かもしれません(25,000円というのも見たことがありますが).また,マルチコートタイプは 2,30% ほど高価になると考えてよいでしょう.またゼンザノン類も比較的安価です.ただし単品で売っている場合,東京光学(トプコン)製といわれる 100mm や,カールツアイスイエナの 80mm は高価である場合があります.

Q:ブロニカにはどのような機種がある?

ブロニカを合併した, タムロンのホームページに一覧がありますので,ご覧ください.フォーカルプレーンシャッターを搭載した(=ニッコールの使える)ブロニカの仕様は,簡単には,以下の通りです.

機種名 発売年 特徴
D  1959 最初のゼンザブロニカ.グレー2トーンの優美なデザインで,最も小型軽量.セルフタイマーを用いた10秒までの長時間露出,完全オートマット式のフィルムバック,1ノブ式の巻き上げ・ピント調整・シャッター速度変更等,特徴が多い.デザインはハッセルブラッドに大変良く似ている.
S  1961 ブロニカDを簡単化したもの.左手側のセルフタイマーを省略し,ここにシャッターダイヤルを配置(以降,S2型まで共通).またDでシャッターダイヤルがあったところに巻き上げクランクを配置することで,1ノブで複数の機能を持たせていた点を解消した.機械式でありながら,ミラーアップが出来るところがポイント.シャッター速度の最高速は 1/1250 から 1/1000 に変更.ハッセルブラッドからのクレームを反映して,デザインは大きく変化.
C  1964 さらに大幅な簡略化を受けたモデル.まずフィルムバックが固定式となり,フィルム途中交換が不可となる.シャッター速度は最高速 1/500 となり,シンクロ速度もD,Sの 1/50 から 1/40 になった.D・Sで特徴的だった,ボディサイドのノブを用いたレンズの繰り出し方式をやめ,レンズ基部のヘリコイドで繰り出す方式に変更.このヘリコイドはボディから取り外すことも可能で,後の全てのモデルで同様の方式が採用された.
C2 1965 Cのマイナーチェンジ.220 フィルムが使用可能となった.
S2 1965 フォーカルプレーン式ブロニカの代表機種にして,最後の機械式ブロニカ.再び,フィルムバックは取り外し可能となった.S型に較べ,レンズ繰り出し方式が異なる(C型と同じ方式になった),ミラーアップが出来ない,シンクロ速度が遅い(1/40秒), などの点が異なる.長期間売られたため,何種類かのバリエーションがある.特に後期型(海外では S2A として売られた)は機械的な安定性が高いといわれる.
EC 1972 S2型までの機構を捨て,新たに電子制御シャッターを採用した.シャッターダイヤルは右手側に戻り,時定数回路(タイマー回路)の抵抗値を切り替える.但しバルブ露出と 1/40 は機械式に制御される.シンクロ速度は 1/60 に向上.ミラー機構は,S2型までの下降式をやめ,上下2分割式に.そのためバランスがよくなりぶれにくくなった上に,ミラーアップが復活した.ファインダスクリーンが交換式となった.大きさ・重量が増し,デザインはローライ SL66 風に.フィルムバック回り,ファインダ回りともにS2型とは互換性がないが,レンズマウントのデザインはC型以降のものと同じである.前期型と後期型がある.
EC-TL 1975 EC型のデザイン・大きさはそのままに,露出計・AEを内蔵したモデル.メインミラー背面にセンサを仕込み,それにより得た光量をファインダに表示・シャッター制御するため,特殊なプリズムなしに,ウエストレベルファインダ状態で測光が可能.測光方式は,絞込み測光で,AE時は瞬間絞込み測光となる.ファインダスクリーン上に適正露出となるシャッター速度が表示される.ファインダからの逆流光を計測することで,ウエストレベルファインダで生じやすい誤差を防いでいる.機械式バルブ・1/40 やミラーアップは健在.
EC-TL-II 1978 フォーカルプレーン式ブロニカの最後のモデル.EC-TL の電子回路をデジタル化し,安定化を図った.同時に仕様が簡単化され,AEはそのまま残ったが,マニュアル露出時に露出計が動作しなくなった(Mランプが点灯する).また,ファインダ内の露出表示も,1/30 以下の速度表示が省略され,スロー表示されるだけになった.

仕様一覧

DSCC2S2ECEC-TLEC-TL-II
バック
交換
××
220対応×××
AE××××××
露出計××××××*1
電池不要不要不要不要不要
シャッタ
最高速
1/12501/10001/5001/5001/10001/10001/10001/1000
X接点1/501/501/401/401/401/601/601/60
ミラー
事前駆動
*2×××
多重露出××××
スクリーン
交換
×××××
セルフ
タイマー
×××××××
*1 マニュアル露出時,露出計表示なし(AE時は適正シャッター速度表示あり)
*2 装備されていないが,セルフタイマー利用でミラー先落とし可

Q:ブロニカの各機種内のバリエーションは?

A:ブロニカには,単一の機種でありながら,いくつかのバリエーションを持つものがあります.まずS2型ですが,これは大きく,通常のS2と,改良された後期型(S2A型含む)があります.S2Aは海外でのみ発売されたようで,国内ではシリアルナンバーのところにS2Aと明記してあるものは少ないのですが,後期型そのものは割とあります.この後期型は,ギアの材質など,耐久性に関与する部分で大幅に改良されています.これは,シリアルナンバーなどでも識別可能ですが,分かりやすいのは巻き上げノブの形状です.ノブのローレットの内側が円錐形に近いもので,巻き上げのクランクが畳まれた状態でも「取ってつけたように」出っ張っているものがS2型です.ダイヤルのローレット内側が一段と細くなっていて,円錐というよりは円筒に近くなっているのが後期型です.また後期型では巻き上げクランクを畳んだときに,巻き上げノブに鋳込まれた細長い突起の間にクランクが挟まるようにして収納されるような形状になっています.タムロンのページにあるものや私のページに掲載しているものは後期型で,前期型はC2と同じ形状となっています.また最後期型はストラップ取付金具から蝶々型のストラップ取り外し金具が無くなり,ストラップがEC型と共通化されました.シリアルナンバーでは,CB5xxxx〜 が前期型,CB8xxxx〜 が後期型(S2A),CB15xxxx〜 がストラップ金具が EC と共通の最後期型のようです.

次に,代表的なバリエーションがあるのはEC型です.これは,EC-TL 型が出たときに,生産を共通化するために変更されたものと思われます.EC前期型では,シンクロコードのコネクタにロック機構があるところ,後期型ではこのロック機構が省略されています.また前記型では電池消耗時にシャッターがロックされるところ,後期型ではシャッターは常にバルブ動作します.また後期型ではシャッター速度として中間速度が利用可能です.

最後にD型のバリエーションですが,これは米国を中心としてごく初期に発売された(Z型として区別される場合もあります)ものがあります.これは,(1)ファインダフードにZの文字がない,(2)フォーカシングチューブに 50mm, 135mm の目盛りがない,などの差があるようです.またその後のものでも,フィルムバックには2種類あります.側面の中央に巻き上げノブがあるタイプはオートマット式で,フィルムが特殊な経路で装てんされるものです.また後期のものは,フィルムは普通にΩ型に装てんされ,スタートマーク合わせ方式となっています.このタイプは,フィルム巻き上げノブおよびフィルムカウンタ窓がやや上に装着されています.

Q:ブロニカに使えるレンズの種類は?

A:互換チャート図(jpg, pdf)を作成しましたので,参考にしてください.

まずニッコールレンズですが,これは,マウント毎に3種類に分かれます.まずは,レンズにヘリコイドを持たないタイプで,これはボディに内蔵された繰り出し機構によりピントを合わせます.以下の種類があります.詳しくはここを参照ください.

名称 構成 フィルタ径 長さ 重量 マルチコートタイプ
NIKKOR-D 40mm F4 8群10枚 90mm 52mm 450g あり
NIKKOR-H 50mm F3.5 6群6枚 82mm 39mm 460g なし
NIKKOR-O 50mm F2.8 7群8枚 77mm 62mm 450g あり
NIKKOR-P 75mm F2.8 4群5枚 67mm 19mm 230g あり
NIKKOR-H 75mm F2.8 DX 4群6枚 67mm 19mm 280g マルチコートのみ
NIKKOR-Q 135mm F3.5 3群4枚 67mm 78mm 410g なし
NIKKOR-P 200mm F4 前期 5群5枚 67mm 95mm 600g なし
NIKKOR-P 200mm F4 後期 5群5枚 67mm 90mm 520g あり

(長さは,マウント後端からフィルタ枠先端まで.また,長さ・重量は実測値)

これらのレンズは全て自動絞りです.また,全てのフォーカルプレーン式ブロニカに取り付け可能です.マルチコートタイプは,たとえば NIKKOR-D・C のように,C の文字がつくことで判別できます.また 75mm や 200mm は,鏡筒のデザインに何種類かのバリエーションがあります(マルチコートの有無は,私の知りうる限りです.もしかしたらまちがっているものがあるかもしれません).

これらの,いわゆる「小バヨネット」のレンズは,繰り出し機構が共通なので,広角レンズに関しては最短撮影距離が大変短いですが,反面焦点距離が長いほど急激に寄れなくなり,倍率も落ちます.そこで,200mm レンズには,専用のクローズアップレンズが付属していました.また,これ以上の望遠レンズになると,実用上無理が出てくるので,ボディに設けられた「大バヨネット」にレンズを装着します.この大バヨネットマウントは,機種別に2種類があり,基本的には相互に流用は不可能です.また一部を除き,自動絞り機構はありません.

まず,ボディに繰り出し機構が固定されており,取り外しの出来ないブロニカD型・S型では,当初,35mm 判であるニコンS型用の望遠レンズを用いるように設定されていました.ニコンS型は距離計連動カメラですが,望遠レンズは,レフボックスを介して取り付けるようになっており,ボディ本体とレフボックスのフランジバックの合計が,ブロニカのフランジバックより長いのです.また,望遠レンズはイメージサークルが大きく,撮影上も問題ありません.これらは 180mm 以上のレンズで,以下のような種類があります.これらのレンズをボディに取り付けるには,専用のアダプターを用います.絞りは連動しません.また同じ設計のレンズに,ブロニカのマウントを固定した,ブロニカ専用のレンズもありました.

名称 構成
NIKKOR-H 18cm F2.5 4群6枚
NIKKOR-Q 25cm F4 3群4枚
NIKKOR-T 35cm F4.5 3群3枚
NIKKOR-T 50cm F5 3群3枚

次に,ブロニカC型以降の,ヘリコイドユニットが取り外し可能な機種については,レンズラインアップが異なり,ニコンF用の超望遠が利用可能です.ニコンF用の望遠レンズは,フォーカシングユニットというヘリコイドが内蔵されたアダプターを共用し,レンズヘッドのみを交換するシステムでしたが,このフォーカシングユニットとしてブロニカ用が発売されていました.つまりこのレンズ群に関しても,フォーカシングユニットをブロニカ用とニコン用の2種類用意すれば,レンズが互いに流用できました.また初期のフォーカシングユニットでは,アダプターを外すとブロニカD,S型にも装着可能なものもあります.レンズとしては,以下のようなものがあります.

名称 構成 特徴
NIKKOR-Q 400mm F4.5 4群4枚 フォーカシングユニット側自動絞り利用
NIKKOR-P 600mm F5.6 4群5枚 フォーカシングユニット側自動絞り利用
NIKKOR-P 800mm F8 5群5枚 手動絞り
NIKKOR-P 1200mmF11 5群5枚 手動絞り

最後に,ブロニカ専用の大バヨネットレンズがいくつか発売されています.その中でユニークなのは,レンズシャッターを内蔵し,全速度でフラッシュに同調可能な 105mm F3.5 LS があります.そのほか,ブロニカ専用の望遠レンズがありました.

名称 構成 特徴
NIKKOR-Q 105mm F3.5 LS 3群4枚 レンズシャッター内蔵.
C, C2, S2, EC 型で利用可能.
長さ58mm, 重量580g
NIKKOR-P.C 300mm F5.6 5群5枚 ヘリコイド内蔵,
C, C2, S2, EC, EC-TL, EC-TLII で利用可能.

その他,ニッコールレンズ以外にも,ブロニカ自らが純正レンズとして発売したゼンザノンレンズ群があります.様々なレンズメーカに委託したり,共同で開発したり,または人材を採用して開発を進めたものもあり,後の ETR シリーズでレンズを自給するための礎となります.

名称 構成 特徴
ZENZANON MC 40mm F4 7群9枚 ノリタ光学製
約330g
ZENZANON MC 50mm F2.8 7群8枚 ノリタ光学製
ZENZANON MC 75mm F2.8 4群5枚 東京光学(トプコン)製
構成はローライプラナータイプ
ZENZANON MC 80mm F2.4 5群6枚 ノリタ光学製(富岡光学製と言われているのは,誤りの可能性が高い)
約300g
ZENZANON MC 80mm F2.8 4群5枚 CARL ZEISS JENA DDR 製
ペンタコン6用ビオメターと同一?
ZENZANON MC 100mm F2.8 4群6枚 東京光学(トプコン)製
ZENZANON 150mm F3.5 4群5枚 ノリタ光学製
ZENZANON MC 150mm F3.5 5群6枚
ZENZANON MC 200mm F3.5 5群5枚 ノリタ光学製
ZENZANON 300mm F4.5 5群6枚 ノリタ光学製

また,社外品のレンズとして,コムラーのレンズは比較的豊富に見かけられます.100mm F2 や 135mm F2.3 という超大口径レンズもありました.

Q:NIKKOR- の後ろに続く文字の意味は?

NIKKOR に続く文字は,ニコンF用ニッコール・オートレンズと同様,用いられているレンズの枚数を示し,以下のように対応します.また,その後ろにCが付いているものは,マルチコーティングされていることを示します.(但し,S型ニコン用レンズで,Cがついているものは,単にコーティングが施されていることを示します.またF用ニッコールレンズでは,New Nikkor 以降は全てマルチコーティングが採用されているため,Cの記号はなくなりました.)

記号 枚数 ブロニカ以外のレンズの例
T 3 S用・F用 NIKKOR-T 105mm F4
Q 4 S用 NIKKOR-Q 50mm F3.5
P 5 F用 Micro NIKKOR-P AUTO 55mm F3.5
H 6 F用 NIKKOR-H AUTO 28mm F3.5
S 7 F用 NIKKOR-S AUTO 50mm F1.4
O 8 S用・F用 NIKKOR-O 21mm F4
N 9 S用 NIKKOR-N 50mm F1.1
D 10 なし(ブロニカ用 NIKKOR-D 40mm F4)
UD 11 F用 NIKKOR-UD AUTO 20mm F3.5
QD 14 NIKKOR-QD・C AUTO 15mm F5.6
HD 16 NIKKOR-HD・C AUTO 13mm F5.6

Q:ベスト・バイのブロニカは?

機械式で,頑丈なものを求めるのであれば,S2,特に後期型がまずお勧めです.また,特に風景を中心に撮影するなど,ブレを嫌う場合は,電子式となりますが,ミラーアップの可能なEC系がお勧めです.またうまく入手できればの話ですが,ファインダスクリーンが交換式となっています. またフィルタワークや接写を多用するため,TTL露出計を使いたい場合,S2型やEC型でも,ウエストレベルファインダとして取り付けるタイプのTTL露出計がありますが,よりスマートなのはボディに露出計が組み込まれた EC-TL 型と EC-TLII 型です.これに,無限遠が出てアオリも可能なベローズを装着すると無敵でしょう.ただし EC-TL 型で,絞込みボタンが押せる(露出計が動かせる)タイプのベローズは珍しく入手は難しいでしょう.

とにかく軽量のものが欲しい,または所有する喜びを満たしたい,ということであれば,ブロニカD型に限りますが,これはかなりヲタク向けのカメラです.ただし,セルフタイマーを使えばミラーショックを避けることが出来ますし,ボディ単体・標準レンズで 50cm まで寄れる点,またフィルムの平面性が優れている点など,魅力のアイテムが詰まっています.