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投稿2697 | ■色の知覚について 日浦 2021/7/19(月)23:10

興味深く拝読しておりました.大学の講義で色彩工学について,1〜2コマぶんで話をしています.

まずよく誤解されていることなのですが,CIE1931 XYZ等色関数のRの分光感度は2つの山を持っていますが,これは人間のL錐体が2つのピークを持つためではありません.L, M, S どの錐体も山は1つです.ではなぜそんなことになっているのかというと,等色実験より得たCIE1931 RGB等色関数(負の値を持つ)を,負の値を持たない関数に変換する上でしかたなく生じたものなのです.数学的な変換の結果(関数全体が負の値にならないように変換した結果),生じているものだと考えてください.

ちなみに CIE 1931 RGB が負の値を持つことをもって,「人間の目には負の感度が・・」みたいなのも一時よく見ましたが,これも誤りです.等色実験の性質上どうしてもそうなってしまう(後述の,3原色ではどうやってもほとんどの単色光は再現できないことと表裏一体の関係にある)のですが,なかなかこれは文書で書くのが難しいですね..一度オンラインでトークしても良いですが..

カメラを作る上では,錐体細胞と同じ感度分布のフィルタを作れば,人の視覚系の色の知覚の範囲をフルカバーするセンサが作れます.錐体細胞と同じ感度でなくても,XYZ 等色関数の3つの関数の線形結合で表されるような感度分布のフィルタが3つあれば,そこから一次変換でXYZ値が計算できます.センサを作る上では,フィルタを実際に製造する上での難しさはありますが,理論上,完全な色再現のカメラを作ることは可能です.また,計測向けにそういうカメラもいくつかあります.XYZカメラや,2次元色彩輝度計と呼ばれています.または分光タイプのセンサで計測してからXYZ値を計算してもよいです(そのほうが工学的には安定なのでよく使われますが,フィルタの透過率で処理するか,計算時の各波長に対する重み付けで処理するかの違いでしかありません).

ただし再現となると話は別です.既に議論にあるように,カラーディスプレイの3つの原色をxy色度図上にプロットすると,そのディスプレイはその3点を結んだ三角形の内側しか色再現できませんので,曲線でできたxy色度図全体はどうやってもカバーできません.講義等で,僕がたとえ話として言うのは,「ロボットアームには6個のモーターがあって,手先の位置と姿勢を自由に決めることが出来る.でも,小さなロボットで100m先の物を掴むことはできない.「自由度が十分に備わっている」ということと「到達できる」ということは別.カラーディスプレイも同様で,3原色で任意の色を表現する自由度を有するが,非常に鮮やかな色には手が届かない」と説明しています.

色の再現を考えたとき,センシング,表示,知覚を分けて考える必要があります.一部,ごっちゃになっている気がしました.

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