いけない改造「F2dateの作成」 T.Kobayashi

  引き出しの奥深くから'80年代前半に作成した「F2date(dataじゃないよ)」の作業経過の写真が出てきました。せっかくですのでまとめてみました。


【プロローグ】
  私が写真撮影にのめり込み始めたのは'70年代前半のことでした。天文に興味があったため、撮影対象はどんどん流星にシフトするようになりました。
  ニコンF一台で始めた撮影も、就職して定期収入が見込めるようになるとともに、徐々にカメラの台数が増えることとなりました。
  流星の出現時刻や撮影開始時刻を秒単位で記録する必要がありましたので、ロジックICとジャーナルプリンタを組み合わせて(まだパソコンは夢でした)写真のような機械を作成してみましたが、ネガとの突き合わせが面倒なことにかわりはなく、画面内に直接データの記録できる装置が欲しくなりました。
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  [写真1 時刻記録装置]

  私の欲しい機能を搭載したニコンF2データが発売されていましたが、とうてい購入できるような価格ではありませんでした。
  「写真工業」誌等に掲載されているニコン各機種の図や写真を見ているうちに、ニコンFM用のデータバックを利用できるのではないかと思いつきました。秒単位の記録は出来ませんが、当初は撮影開始時刻を毎分ゼロ秒に開始することにすればなんとかなります。その後外付けLED制御回路を自作し秒単位を記録できるようにするという方針をたてました。


【改造作業】
  ニコンFM/FE用データバックMF-12は交換式データバック初期のものであり、ボディからデータバックへの撮影信号の送出がシンクロ接点利用のため改造にはもってこいです。幸いにもコードレスのものが普及しはじめましたので、中古品を安く入手することができました。
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  [写真2 ニコンFM/FE用データバックMF-12(シンクロコードをはずしています)]

  (私にとって当時)高価なF2の裏蓋を改造してしまうことはためらいがありました。そこでいろいろと手を尽くし中古品を入手することに成功いたしました。
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  [写真3 ニコンF2裏蓋]

  ニコンFM/FE用データバックの中は想像していた通り改造作業がやりやすいものでした。
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  [写真4 ニコンFM/FE用データバックMF-12を開いたところ]

  ニコンF2用裏蓋に金工用糸鋸で、MF-12のフィルム圧板や回路基盤がとりつけられるように「穴」を開けました。
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  [写真5 穴を開けたニコンF2用裏蓋]

  穴の開いた裏蓋をニコンF2ボディに取り付けて変な「歪み」等が生じて取り付け不能になっていないか調べました。
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  [写真6 F2に取り付けてみたところ]

  歪みも問題無いようでしたので、穴の開いたニコンF2用裏蓋にMF-12の回路基盤やフィルム圧板を取り付け、革張りをなおしてF2用データバックの完成です。
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  [写真7 完成したF2用データバック]

  完成してみると、全然違和感がないじゃないですか。カメラ関係の某社に勤めている友人の結婚式披露宴(当然ながら出席者の多くはカメラ関係の仕事をしています)に持参しましたが、気づかれませんでした。
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  [写真8 完成したF2date 裏蓋側]

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  [写真9 完成したF2date マウント側 (シャッターを開いています)]



【エピローグ】
  後に外付けLED制御回路を自作するという方針は実行されることはありませんでした。 他のことに時間をとられてしまったためです。
  だからといって流星をとらえることをやめてしまったわけでもありません。高性能のデータバックが入手しやすい価格でニコンから発売されたからです。
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   [写真10 コマ間データバックMF-18付きニコンF3]

  秒単位の時刻の記録が欲しいと思いはじめてから約25年にして、やっと理想的なデータ写し込み装置ニコンF4用コマ間データバックMF-23にて念願の写真を撮影することができました。
  1998年11月18日、しし座流星群の写真撮影中に大火球(明るく輝く大流星)が出現しました。この大火球の消えた後に「痕」と呼ばれる地球大気と流星物質との衝突によって生じる「光る雲」が発生したのです。
  この痕が刻々と変化していく姿を秒単位の記録をしながらとらえることができました。
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  [写真11 コマ間データバックMF-23付きニコンF4]

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  [写真12 MF-23時刻写し込み例。1998年11月18日しし座流星群のときの流星痕連続写真より]

  この手の写真にはまだ、フィルムカメラのほうが良い結果が得られるものと、1998年のときに心配となったフィルム残量の問題を解決すべく、約250コマの連続撮影が可能な長尺マガジン装置MF-24まで入手してしまいました。
  デジタルカメラでの記録写真撮影へと急転回する前に戦果が得られるのか、それとも「大艦巨砲の憂き目」を見ることになるのか、賽は投げられてしまいました。
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  [写真13 250コマ撮影データバックMF-24付きニコンF4]